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出版社内容情報
家族との確執もあって悪魔島に赴任したヌヴェール中尉が、そこで見たものは何か。
南米の赤道直下の流刑地で展開する奇怪な冒険を語る、ボルヘスの年少の師の会心作。
内容説明
ユートピア的な幻想としての〈島〉を舞台に、究極のコミュニケーションの道を閉ざされた人間の絶対的な孤独を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かわうそ
26
「モレルの発明」と同じく人里離れた島で不可解な出来事が続発し最後に伏線が一挙に回収される構成。真相はバカミスすれすれというかバカミスそのものだけど、凝りに凝った構成や叙述による物語の錯綜こそが醍醐味。それにしても斬新な脱獄だ…2014/10/28
nbhd
15
もう午前4時を過ぎている、眠れなくなってしまった。いま書きたいことだけを書くのなら…終始不穏、作者によって蒔かれた謎が作者の手から離れて、自律独立、大真面目にひとりあるきをはじめ…いやでも、蒔かれた謎は複数だから、謎集合…といっても、謎が目指す方向はバラバラで、それはまとまりのない教団のようで…最後に一応のタネ明かしはされるものの、それまでに蒔かれた謎の種が芽を出して、もう頭ん中で伸び放題、盛り放題なものだから、タネ明かされても、密林なんだか黒い海のような謎に八方塞がれてしまっている。2014/03/21
ふくろう
13
人はどこまでも自分の主観と五感にしばられた生き物であり、その点ではすべての人間が牢獄につながれている。脱獄、プリズンブレイク、この言葉から連想する方法とはまっこう反対するやり方で、彼らは脱獄した。『モレルの発明』にしてもそうだが、カサレスの作品は、種明かしの衝撃と同時に襲いかかる袋小路っぷりがはんぱない。2011/02/05
志ん魚
11
『モレルの発明』と同様、幻想とSFを融合させたような「孤島の実験」モノなのだが、こちらはサスペンス要素が強く、非常に凝った語り。主人公からの書簡による、意図的に限定され、歪められ、混乱した情報を頼りに進行するため、最後の最後に全貌が明かされるまで、読者も焼け付くような不安感を共有することになる。そして肝心の「実験」内容だが、やはり今回も人間の「認識」や「存在」を揺さぶるような奇抜で哲学的なアイデアであった。果たしてこの世界は自分の外側にあるのか、内側にあるのか。。。2012/01/23
gu
4
『モレルの発明』『大空の陰謀』とこの作品で「信用できない語り手の手記+SF」の三部作になるらしい。SFとはいえその着想の源は鏡像、分岐する時間、言語の共感覚的な組み換えなど、ボルヘスとビオイ=カサーレスが好んで語った文学的テーマ達である。2022/08/28