出版社内容情報
ジョセ・ルイス・ペイショット[ジョセ ルイス ペイショット]
著・文・その他
細山田純子[ホソヤマダジュンコ]
翻訳
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
62
いつから始まるのだろう。生きていく内に人が自身の生を呪い、疎み、心が絶望と諦めに爛れ墜ち、死を待ち侘びるのは?自分がそんな人間となった事を改めて思い知らされるような読書体験だった。謙虚なヨブのように妻と子の為に耐え続けたジョゼの心が折れた瞬間の痛ましさときたら。身寄りが亡くなったジョゼの妻を犯し、彼女の名誉を傷つけた不和の象徴の大男、人々を結婚させた後で夫側に不審を煽る悪魔が人々を引っ掻き回すのに対し、不死の預言者かと思えるガブリエル親方は人々を生へと引き戻そうとする。しかし、それらも徒労でしかないのだ。2022/12/01
ヘラジカ
54
ポルトガルの鬼才ジョセ・ルイス・ペイショットによるデビュー作。日本では長篇『ガルヴェイアスの犬』、短篇「川辺の寡婦」に続く邦訳である。木下眞穂氏の解説であらすじを読んだときから翻訳されるのを楽しみに待っていたが、これがまたなかなかの難物であった。終末へと向かって崩れていく生死のカオス、リフレインの多様によって反射する迷宮のような文章に、後半は頭が痛くなるくらいだった。本国で”爆発的なベストセラー”とは恐ろしい。日本では到底考えられない話だ。『ガルヴェイアスの犬』を楽しんだ読者は是非とも挑戦してみてほしい。2022/09/25
川越読書旅団
23
ベケット以来の衝撃。現代ポルトガルを代表する作家ジョゼ・ルイス・ペイショットのデビュー作、曰く「人間は孤独で迷えるものだが、その人間を徐々に退廃へと追い込んでいく、大きな力が存在するというパラドックスを作品の中に込めた」作品であるとのこと。その点を意識して再読する必要あり。2023/04/22
かもめ通信
21
読んでいるとまるでらせん階段をぐるぐると下っているような気分になってくる。慌てて進めばめまいがしそうでゆっくりと慎重に降りていく。降りていく先、あの点にみえるところにはなにがあるのだろうと思いながら。のぞき込めばのぞき込むほど、深くなる気がする穴の底を見つめながら、物語を読む。余韻の残る本だ。読み終えた後もあれこれと考え続けてしまうような…。2022/10/18
水生クレイモア
13
「世界は終わり、そして何も残らなかった。」 内陸部のとある寒村を舞台に、世代を継いで紡がれる情念の物語。幻想・退廃的な雰囲気のポルトガル文学。2022/10/20