内容説明
「因果とは何か」、「そもそも科学は何を知るのか」、「科学者は“価値”をどこまで語ってよいのか」。科学哲学はこうした問いを掲げながら、必ずしも科学そのものとは交わらない独自の発展を遂げてきた。本来あるはずの科学哲学と科学の接点はどこに見出せるのか。「統計哲学」の視点から開かれる新しい眺望とは。
目次
第1部 科学哲学は何を問題にしてきたか(因果性;実在論/反実在論;価値判断)
第2部 科学哲学と科学の接点(因果論と因果の発見;実在論論争と科学の実践;価値判断と科学者の規範)
著者等紹介
松王政浩[マツオウマサヒロ]
北海道大学大学院理学研究院教授。1996年、京都大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。静岡大学情報学部助教授を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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すずき
3
1,4-2,5-3,6の順で読んだ方がいいかなと思う。実際の科学実践とのつながりを強く意識して、理論と実践の双方向からアプローチしているのが特徴的。けどかなり難しかった。統計哲学の専門家らしく、仮説の受け入れ、棄却に価値判断が関わっていく議論であるとか、実在論と反実在論の対立もそうした統計的な手法とパラレルに考えるとかについても特徴的だった。2021/06/14
Q
0
科学を対象とした哲学の一種である***科学哲学***についてなんとか解説してみる本。この分野について全く聞いたことがないので手に取った。が、自分にはとても難しい本だった。本書の多くの頁は因果関係に注目していたように思う。結局科学が因果関係を扱う場合、なんらかのモデルを作ると思う。科学が比較的柔軟なのはこのモデルを柔軟に選べるところではないか。統計やディープラーニングその他なんでも良い。また本書で指摘されている通りモデルの前にその周辺が固まっている場合もあるだろう。2022/02/07
buuupuuu
0
前半で哲学的な議論状況を概観し、後半でそれを科学的実践に繋げることを試みるという構成。例えば「価値」の場合、前半で、科学は価値判断から独立かという問題が取り扱われ、後半で、科学者の社会的責任の範囲について考える、等。具体例が豊富で、ニュートリノ振動の発見や、気候変動に関するIPCCの報告、地震予知における情報発信など、文系の自分にはそれだけでも興味深かった。2021/01/10