中公文庫
群衆―機械のなかの難民

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  • サイズ 文庫判/ページ数 515p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784122052307
  • NDC分類 210.6
  • Cコード C1121

出版社内容情報

19世紀末、漱石が、横山源之助が、ラフカディオ・ハーンがみた新しい群衆。群衆社会=大量消費社会成立までの百年、群衆とともにあった「時代の哀しみ」を、巨大科学が人を「量」として支配する、非情の現代に問いかける。

内容説明

二十世紀は「群衆」の時代だった。日露戦争以後、漱石、啄木、大杉栄、夢野久作らが見た新しい群衆。その本質と変容を色彩豊かに描き出し、戦後大衆社会論を超克する視座を提示した画期的論考。読売文学賞(評論・伝記部門)受賞作。

目次

第1章 二十世紀の群衆の貌
第2章 「坊っちゃん」たちの怒り
第3章 性急な人々
第4章 機械人の群れ
第5章 狂える歯車
第6章 消耗品の群れ
第7章 磨滅する群れ
第8章 ノリのような建築のなかで

著者等紹介

松山巖[マツヤマイワオ]
1945年東京生まれ。作家・評論家。70年東京芸術大学美術学部建築科卒。主な著書に『乱歩と東京』(日本推理作家協会賞評論部門、ちくま学芸文庫)、『うわさの遠近法』(サントリー学芸賞、青土社)、『闇のなかの石』(伊藤整文学賞、文藝春秋)など。『群衆』で第48回読売文学賞(評論・伝記部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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ネムル

11
日露戦争頃からバブルまで、漱石・啄木・大杉栄・夢久・金子光晴・中井英夫らの書物を手がかりに群衆の変遷をたどる。日比谷焼き打ち事件・電車値上げ騒動からみた『坊っちゃん』『破戒』『雲は天才である』のラストの差や、大杉栄虐殺事件や当時流行った子殺し事件の『ドグラ・マグラ』へ落とした影、といった文学ネタ、あるいは辰野金吾(凱旋門としての東京駅)に対する後藤慶二(奥多摩監獄)と白樺派の影響(なんか長谷川尭ぽいね、『神殿か獄舎か』だし)などの建築ネタがすごく面白い。2020/05/02

かふ

8
知識人が「群衆」と言うときそこから距離を置いて分析する対象として観察する。その典型として今村仁司『群衆―モンスターの誕生』は個人の知性が恐れる近代化する群衆という構図。それとは反対に群集の中に入って「大衆」として共に行動していく鶴見俊輔『身ぶりとしての抵抗』。その間にあるのが松山巌『群衆 - 機械のなかの難民』だろうか。群衆を最初に捉えた(ロンドン留学での個と群衆の体験)漱石から始まって、啄木、大杉栄、夢野久作、中井英夫、金子光晴と近代化の中で右往左往していく群衆の中で文学者の眺めた群衆論。2016/02/10

politics

3
明治末期の日露戦後から昭和中期の高度成長期頃までの「群衆」について、文学作品や建築物などから読み解いた一冊。啄木の「性急」な日本人、大杉栄の機械人論など、興味深い分析が多くみられるが、中でも白眉なのは、大正中・後期の夢野久作論だろう。難解な「奇書」として有名な夢野の『ドグラ・マグラ』を、実際の事件と関連づけて読解していくのは大変刺激的だった。昭和に入ると群衆の変容が見られるとしているが、現代ではSNSなどの登場により群衆はどのような形態となるのか、更に探求してみたいと思わさせれた。2022/07/01

ちあき

3
「日本近現代史シリーズ・20世紀の日本」の一巻として出たものの文庫化。都市論・都市文学論の名著『乱歩と東京』の作者らしい、目配りがよくて読みごたえのある本だった。とくに第5章の夢野久作論が出色。日本史選択だったけど明治以降の知識はけっこうあやしい、社会史・経済史も苦手だったりする、『ドグラ・マグラ』や『虚無への供物』は読んだことがあるけど…なんて学生さんはぜひ読むべきだな。『自由からの逃走』や『大衆の反逆』を読んでみようという人が助走をつけるのにもいいと思う。2009/12/19

k.m.joe

2
「群衆」をキーワードに日本の近代~現代史を語る。国家権力と対峙する庶民のパワーをヒシヒシと感じる。クール・ジャパンはここにはない。2012/11/04

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