出版社内容情報
公共性とは,閉鎖性と同質性を求めない共同性,排除と同化に抗する連帯である.現在提起されている「公共性」は異質な声に鎖されてはいないだろうか.互いの生を保障しあい,行為や発話を触発しあう民主的な公共性の理念を探る.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
(haro-n)
78
私が公共性に興味を持ったのは、公共財との関連ではなく、日本の「公」の意識が西洋のそれとは異なることへの気づきがきっかけである。本書を開き、筆者がアーレントの思想に多くの発想の原点を求めていることを知り、興味をより深めた。筆者は、公共性-同一性ではなく公共性-複数性という視点から、他者との関係性をリアルに捉え直そうとしつつ、その限界についても論じているようだ。公共性の定義とその多面的性質を今回は理解。線としての把握が出来ていない上に点の理解も危ういので、早々に再読予定。薄いが非常に濃い内容。参考文献も充実。2017/12/11
ジュン
11
斎藤純一先生は公共性を確保するためにアーレントから始める。ホロコーストを考えつくしたアーレントは、有用か無用か、役に立つかどうかという功利主義的な尺度で測るかぎりこの世界は「余計者」であふれる、だから共通の尺度では測られない唯一の比類のないもの(unique)から始めよう、と。簡潔にしてわかりやすい。非常な名著である。2021/09/16
politics
7
アーレント・ハーバーマスを批判的に検討しながらあるべき「公共性」を探究した政治理論の名著。アーレントを単独で扱った書では無いが、アーレントを政治理論としてどの様に読解していくのか、その一つの方法を本書からはかなり学ぶことが出来る。ただ著者のナショナルなものへの忌避感には賛同しかねる部分が多い。公共性とは排除をしない空間にも関わらず、ナショナルな部分をスクリーニングするとは矛盾では無いだろうか。ナショナルなものを下地にし、その上に排除をしない空間を作ることでも、立派な「公共性」を構築できるのでは。2024/02/12
D.Okada
7
要再読。アーレント、ハーバーマスを議論の中心に、公共性について論じた本。100頁足らずであるが、大変内容は濃いし、難しい。人々の〈間〉の喪失によって絶対的な価値への排他的自己同一化がひき起され、そうして複数の価値の間での言説の空間としての公共的空間が廃棄される....そういうようなネオリベラリズム批判なども含めて、現代社会の取り巻く状況いついても鋭く論じている。2011/03/07
Sakana
5
すごく圧縮されてる。120頁しかないのに、読むのにすごく時間がかかった。アレントやカントはすでに自分が読んでいたこともあって、分かり易かったが、そうでなくては到底付いていけなかっただろうなと思う。親密圏については誤解していた部分も多く、良い勉強になった。とはいえ、なにせ情報量が多いので、まだうまく整理できていない。近いうちに再読して、自分の言葉でまとめておきたい。それからまた改めて感想を書きたいと思う。2015/12/06