内容説明
ここはアフリカの底なしの森。10歳の頃からやし酒を飲むことしか能のない男が、死んだやし酒づくりの名人をとりもどしに「死者の町」への旅に出る。頭蓋骨だけの奇怪な生き物。地をはう巨大な魚。指から生まれた凶暴な赤ん坊。後ろ向きに歩く死者の群れ…。幽鬼が妖しくゆきかう森を、ジュジュの力で変幻自在に姿をかえてさまよう、やし酒飲みの奇想天外な大冒険。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
miroku
25
原始的な神話のような物語。妙な迫力があるなぁ・・・。2015/03/02
ミツ
24
なにこれめっちゃ楽しい!!いつともどことも知れず、神々、精霊、魑魅魍魎の跋扈する、生命と死の強烈なエネルギーと魔術的幻想に溢れた神話のような物語。死んだやし酒造りに会うために始めた旅の途中で遭遇する無理難題や危機の数々を切り抜けていく様は何とも愉快で、イマジネーションの洪水のような異形の神々精霊たちはその姿を想像するだけでも充分に楽しい。濃密な生命と死の恐怖に満ちた密林で、ドラムが鳴り、ソングが響き渡り、ダンスが魅了する。豊饒な物語そのものが持つ力強さ、物語を聞くことの快楽を存分に堪能できる名作。2016/08/20
長谷川透
18
10歳の頃から「やし酒飲み」だった主人公が、死んだ「やし酒作り」の代わりを探す冒険譚。冒険譚と聞けば成長小説を第一に考えるが、出だし早々、この小説はそんな先入観を破壊してくれた。幽霊、化け物、精霊が代わる代わる登場する。やし酒「中毒」による幻覚なのか、アフリカ世界の世界観なのかは判断しかねるが、物語は荒唐無稽にあれよあれよと転びながら進む。アフリカの密林を舞台にしたアル中男による『不思議の国のアリス』といった感じ。強めのお酒を片手にどうぞお読み下さい。2012/05/06
乙郎さん
16
実はすごくストレートな話だと思う。アフリカの土着的なものを感じるキャラクターの数々は魅力的で、ストーリーも子供が読んでも理解できるほど。また、人間の自立という裏テーマも読み解くことができると思う。ただ、中盤がちょっと冗長だった。2009/08/06
sabosashi
14
この荒唐無稽さ、理不尽さ、有り余るバイオレンスは何だろう。 秩序と良識が存在する以前の混沌さ、そこではすべてが含まれ、何もかもがゆるされる。 これこそ歴史が始まる以前の人間とそれを囲む世界の有様だったのではないだろうか。 こんな話は、まったく思い出せないわけではない。 たとえば西洋中世奇譚集成 皇帝の閑暇 (講談社学術文庫)。「バウドリーノ」の初めの部分。カズオ・イシグロの「忘れられた巨人」の初めの部分も。 2021/09/29