出版社内容情報
「常に仲間と夢を追うタイプだ」「1人で過ごすほうが落ち着く」。好みや性格までを左右する価値観は当然ながら人によって異なる。それは育った時代や環境によって経験的に培われる。――しかし、もしその価値観が人に生まれつき備わっていて、生理的に規定されていると考えるとしたら、作品の読み方も変わってくる。
同時期にともに日本の北方の富裕な家庭に生まれた坂口安吾、太宰治、亀井勝一郎の3人に焦点を当てて、マルクス主義運動や第2次世界大戦などの時代背景も踏まえながら、それぞれの思想や主張を丁寧に整理していくと、彼らの価値観のなかに基準があることが見えてくる。
社会での人との関わり方とその結果生じるストレスに対する生理的な耐性というものから、人間の価値観の3つの類型を推論し、そのタイプによって価値意識や価値判断が異なることを明らかにする。さらに、カント、ニーチェから大江健三郎、村上春樹など古今東西の思想家・著述家をも対象にして、その3類型が時代や環境を超えて見て取れることを明らかにしていく。
人々の分断が叫ばれる現代社会で、あらためて人間の価値観とは何かを考えさせる重厚な一冊。
内容説明
同時期にいずれも日本の北方の富裕な家庭に生まれた坂口安吾、太宰治、亀井勝一郎の3人に焦点を当てて、それぞれの思想や理念を丁寧に整理して、彼らの価値観のなかに生物生理的な基準があることを考察する。さらにその基準が時代、地域、学問領域を超えて普遍的に存在する、人間の価値観の起源のひとつであることを検証する。
目次
第1部 坂口安吾と太宰治と亀井勝一郎(青少年期までの亀井勝一郎と坂口安吾;青少年期までの二人の軌跡からの「対人ストレス耐性」の導入;対人ストレス耐性大である亀井;対人ストレス耐性小か無である安吾;太宰の生い立ちと青春期まで―対人ストレス耐性中と推定;「対人ストレス耐性中」についての一般論;青年期以降の太宰の軌跡―対人ストレス耐性中;亀井、太宰、安吾の相互批評―対人ストレス耐性大/中/小か無の相互批評)
第2部 世界へそして現代へ(「価値生理学」序論―「対人ストレス耐性三類型論」がもつ意義;「対人ストレス耐性三類型論」の応用―日本近現代文学;「対人ストレス耐性三類型論」の応用―世界の哲学、思想;「対人ストレス耐性三類型論」の応用―現代日本の哲学、思想;「価値生理学」序論―「対人ストレス耐性三類型論」のまとめ)
著者等紹介
田中健滋[タナカケンジ]
1953年、北海道生まれ。精神科医、前電気通信大学教授。専攻は精神医学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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