内容説明
大正から昭和初期、モダニズムと大衆文化の時代―。新聞や雑誌、ラジオ、レコードなどのメディアを介して、文学とスポーツはそれぞれの最前線で交錯した。レトリックと身体が衝突し、神話とアスリートが握手をかわす“文学とスポーツのアリーナ”を物語や表象などから多面的に分析する。現代に続くスポーツをめぐる文化の配置図のルーツは、ここにこそある。
目次
スケートリンクの沃度丁幾―山口誓子『凍港』の連作俳句について
時を忘れる愉楽―疑似ゴルフに人々が抱いた夢想
“肉体”におびえるとき―モダニズム前夜のスポーツ小説として『友情』を読む
声の複製技術時代―“スポーツ空間”と複合メディア状況
ゴムボールを手にした子供たち―「少年倶楽部」に見る野球
テニス文芸のレトリック―田中純と月刊「テニスファン」
変奏される“身体”―女子スポーツへのまなざし
水際のモダン―身体と欲望の劇場へ
「わたし」と「わたしたち」の狭間―「走ることを語ること」の意味
スポーツしない文学者―祭典の熱狂から抜け落ちる「オリンポスの果実」
著者等紹介
疋田雅昭[ヒキタマサアキ]
兵庫県生まれ。長野県短期大学助教。専攻は近・現代詩、モダニズム、アヴァンギャルド
日高佳紀[ヒダカヨシキ]
島根県生まれ。奈良教育大学准教授。専攻は日本近代文学
日比嘉高[ヒビヨシタカ]
愛知県生まれ。名古屋大学大学院准教授。専攻は日本近代文学・文化論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あまみっく
1
大正から昭和初期にスポーツがどのように大衆に広まり、「言葉」で表象されていったかを紐解く。スケート、ベビーゴルフ、卓球、野球、テニス、陸上、水泳、山岳と扱われる競技は多岐に渡り、普段見ない競技の歴史も垣間見ることができ面白かった。個人的にはフェミニズムの観点からの論考もあったのが嬉しかった。しかし、女性とスポーツを巡る問題は100年前から変わっていないことに深い溜息が出る。2023/07/09
あかいはね
1
東西の若手研究者を取りそろえた、スポーツに関連した文学の論文集。同志社関係が多いのかな、西の方の人達のってなかなかまとめて読む機会がないから新鮮。2009/09/03