出版社内容情報
グローバリゼーションのなかで変容するインドと南アジア芸能の現状を、政治・経済・社会的変化という文脈に位置づけて、人類学的な観点から明らかにする。
インドの経済自由化と南アジアの社会変化のなか、音楽、舞踊、演劇などの南アジア芸能が、多様化する情報メディアの拡大と人の移動を通じて幅広く受容・消費される状況が注目を集めている。
特に、芸能の実践者たちが従来の社会関係を超えてトランスナショナルなネットワークに参入することで生じる南アジア芸能の再定義と拡張を捉える。現代の芸能実践者たちは、様々な観客・消費者の嗜好に応えるために従来とは異なる美意識とパフォーマンスを身につけ、市場経済原理に合わせたマネジメントとマーケティングをおこなっている。
各章で、彼らが新たな需要に応える一方で、既存の芸能形態や社会形態を維持しながら南アジア芸能を創発・変容させていく過程を具体的な事例に基づいて描き出す。実践者の移動と芸能に着目して、インド文化を中心にした南アジア文化をめぐる表象とポリティクスの問題を浮き上がらせる。
グローバリゼーションのなかでの南アジア芸能のフローと変容を4つの類型に分けて、複数の地点の間を多方向的・可逆的に流れる文化的フロー、環流のダイナミクスを捉える。
目次
グローバリゼーションと“インド”文化の環流を芸能からみる
第1部 ワールドミュージックの拡張と展開(越境し環流する音楽文化―フランスでのインド伝統音楽の再帰的グローカル化;「愛」を歌うスーフィー歌謡―カウワーリーの現在を中心に;インドの宗教歌謡キールタンの越境―宗教実践とポピュラー音楽の間)
第2部 局地的フローにみるローカルとグローバルの交渉(民謡の共和国―ネパールでのロクギートの流動と歴史的展開;インド北東部ナガランド州にみるローカリティの再創造―ポピュラー音楽振興政策とフェスを通して「つながる」ナガの若者たち;ふさわしいリズムを求めて―チベタン・ポップ歌手のレコーディング過程からみるグローバル化の様相)
第3部 リージョナリティを媒介するフローの環流(パチもんの逆襲―インド映画の二十一世紀;「傍流」としての地域芸能が生み出す故郷とのつながり―湾岸アラブ諸国クウェートでのゴア・クリスチャンのティアトル劇実践)
第4部 南アジア系舞踊のグローバルなネットワークと環流(インド舞踊のグローバル化の萌芽―ある舞踊家のライフヒストリーをもとに;見え隠れする芸能の宗教性―マレーシアでのインド舞踊の存在;南インド古典音楽・舞踊の還流)
著者等紹介
松川恭子[マツカワキョウコ]
1972年、大阪府生まれ。甲南大学文学部教授。専攻は文化人類学、南アジア地域研究
寺田吉孝[テラダヨシタカ]
1954年、三重県生まれ。国立民族学博物館名誉教授。専攻は民族音楽学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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