出版社内容情報
戦前期日本で「映画館に行く」とはどのような経験だったのか。1907年に誕生して以降、戦前期の映画館が毎週発行していた広告メディアであるプログラムに着目して、映画史初期から続くメディア横断的な経験のあり方に光を当てる。
戦前期にはすでに、映画館で作品を「見る」だけでなく、プログラムの文字と紙を「読むこと」、投稿や概要、批評を「書くこと」が観客の映像経験に分かちがたく結び付いていた。さらに、映画館という場所、映画という映像、プログラムという紙などの複数のメディアが折り重なるようにして、「映画を見る」経験を支えていた。
映画配給がもたらす時間感覚や、戦前から複合施設化していた映画館の実態、戦局の悪化によって映画興行が統制されていく諸相も掘り起こし、メディアミックスや大小さまざまなスクリーンをインフラとした今日のメディア経験の源流にある、戦前期日本の豊かな映像文化を描き出す。
目次
序章 オフ・スクリーンの映像文化
第1章 映画館プログラムの成立―一九〇七‐一〇年代前半
第2章 映画観客の“読み書き”空間―一九一六‐二〇年代
第3章 映画館における/についてのコミュニケーション―一九一〇年代後半‐二〇年代
第4章 「複合施設化」する映画館―一九二三‐三〇年代半ば
第5章 遍在する映画イメージ―一九二〇年代後半‐三九年
第6章 映画興行をめぐる規格化の論理―一九三九‐四四年
終章 積層するメディア経験の地層学
著者等紹介
近藤和都[コンドウカズト]
1989年、愛知県生まれ。大東文化大学社会学部講師、博士(学際情報学)。専攻は映像文化の社会学、メディア・スタディーズ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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