出版社内容情報
一般的には「異常」や「障害」としてネガティブにとらえられがちな〈色盲〉。だが、そういったイメージは「近代」によって作られたものにすぎなかった――。
ドルトン、ゲーテ、メリヨン、ブルースター、ショーペンハウアー、ヘルムホルツ、ヘリング、スーラ、ホルムグレン、シュティリング、そして石原忍……。18世紀末から19世紀末までの近代ヨーロッパと20世紀前半の日本で〈色盲〉という概念の形成や色覚検査器具の開発に関わった有名無名の哲学者、芸術家、科学者たちの言説を渉猟することによって、現代の私たちが知るものとはまったく異なる〈色盲〉の姿を浮かび上がらせる。
哲学・医学・生理学・社会学・芸術学・メディア論など、様々な領域にまたがる豊富な資料を横断的に読解しながら、きたるべき「色覚多様性社会」の構想をも視野に収めた画期的な成果。
内容説明
“色盲”はいつから「病」や「異常」や「障害」になったのか、どのようにして「排除」や「治療」や「規律」の対象になったのか―。十八世紀末から十九世紀末までのヨーロッパと二十世紀前半の日本の知の古層に分け入り、近代的な“色盲”概念の系譜をたどる。
目次
視覚玩具としての石原表―色盲の両義性
第1部 「青」の時代―色盲の前近代(ジョン・ドルトンの「青」―色盲者の言語の発明;ゲーテの「青」―色盲者の色世界の可視化;シャルル・メリヨンの“青”―色盲者の記憶の寓意)
第2部 十九世紀における色彩秩序の再編成―知覚と言語の弁証法(色盲の「名」をめぐる論争―DaltonismeとColour Blindness;ショーペンハウアーにおけるカント哲学の生理学化―「経験的=超越論的二重体」としての色盲者の誕生;ヘルムホルツ対ヘリング―生理学的な「原色」の探究;ラーゲルルンダ列車事故の衝撃―ホルムグレンの方法をめぐって;カント主義の哲学者としてのシュティリング―知覚と言語の対立から仮性同色表へ)
第3部 石原表と「近代」のほころび(石原忍体制の成立―戦時科学と色盲;いかにして色盲を「治療」するか―「補正練習法」と規律の技法;石原表のゲシュタルト崩壊―石原体制の内破)
色盲者の言葉を取り戻すために
著者等紹介
馬場靖人[ババヤスヒト]
早稲田大学総合人文科学研究センター招聘研究員、博士(文学)。専攻は科学思想史、メディア論、視覚文化論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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原玉幸子