出版社内容情報
戦後日本のポピュラー・カルチャーは、たとえば『ゴジラ』が水爆実験を経て出現した怪獣だったように、社会に対する批評性をもつものでありえた。それこそ、文学や芸術といったメイン・カルチャーがそうであったのと同様に、だ。では、ポピュラー・カルチャーが内包していた政治性は、時代とともになぜ・どのように抜け落ちていき、現在にいたったのだろうか。
1950年代から80年代までの『ゴジラ』や『モスラ』などの特撮映画の歩みをたどって作品の内部に分け入り、並行して日本のSF史で転換点となった60年代・70年代のSF作品や文芸評論家の論争を分析する。
3・11後の文化状況、『パシフィック・リム』『GODZILLA ゴジラ』、そして『シン・ゴジラ』も射程に収め、戦後のポピュラー・カルチャーが社会的なものと距離を置くようになり、非政治的なジャンルとなったプロセスを特撮映画とSFの交差点から照らし出す。
凡例
序章 「非政治的」な領域としてのポピュラー・カルチャー
1 『ヘタリア Axis Powers』をめぐる騒動から見えてくること
2 本書の主題――怪獣・怪人からポピュラー・カルチャーを見る
3 本書の方法――「ジャンル」への着目
第1章 『ゴジラ』をめぐる批評の力学――「平和への悲願」の意味
1 『ゴジラ』を取り巻く映画たち
2 『ゴジラ』と水爆実験
3 「原爆映画」との比較から?――「センチメンタル」という批判
4 「原爆映画」との比較から?――背景としての「逆コース」
5 ありうべき『ゴジラ』――『G作品検討用台本』から
第2章 「空想科学映画」の射程――『空の大怪獣 ラドン』『地球防衛軍』
1 「空想科学映画」という価値観
2 「原爆文学」評価との関係から
3 『地球防衛軍』と文明としての核エネルギー
第3章 現実の批判者としての怪獣・怪人――文学者の実践と「特撮映画」
1 「特撮映画」と「正しい空想」
2 幽霊と化け猫と怪獣
3 「アヴァンギャルド的」特撮映画論の完成
4 「第三次世界大戦前夜」における文学者の実践
5 「発光妖精とモスラ」と安保闘争
第4章 SF規範をめぐる科学と政治――「SF(日本SF)」が切り捨てたもの
1 「SF(日本SF)」史における一九六〇年代
2 夢見られたユートピア
3 規範としてのディストピア
4 現在とは断絶した未来
5 「クール」なSFと「未来学」
第5章 「軽薄」であることの意味と価値――「SF(日本SF)」、テレビ、怪獣
1 一九六〇年代の「SF(日本SF)」と「特撮映画」
2 ショート・ショートに見る「相対化」の方法論
3 文芸評論家たちのテレビ論と「アクチュアリティー」の変容
4 テレビメディア発達状況下での「SF(日本SF)」の実践
5 「ドタバタ」のアクチュアルさ
6 怪獣を「軽薄」に扱う法
第6章 キャラクター消費という問題――「特撮映画」ジャンルの再編と「オタク第一世代」
1 パニック・スペクタクル映画をめぐる世代間対立
2 「特撮映画」ジャンルの再編
3 怪獣ゴジラが背負うもの
終章 キャラクターは「政治的」足りうるか――近年の文学的・美術的実践と「特撮映画」ジャンル
1 本書のまとめ――「特撮映画」・「SF(日本SF)」ジャンルの形成と変容
2 怪獣・怪人による社会批判
3 「怨嗟」の形象化としての怪獣ゴジラ
4 ポピュラー・カルチャージャンルの内と外
エピローグ
参考文献一覧
索引
森下 達[モリシタ ヒロシ]
1986年、奈良県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。京都大学博士(文学)。東京成徳大学人文学部助教。専攻はポピュラー・カルチャー研究。共著に『複数の「ヒロシマ」』(青弓社)、論文に「原子力の「夢」と「幻滅」」(「二十世紀研究」第14号)、「「罪と罰」から「ある一夜」へ」(「マンガ研究」第20号)、「ヒロインが「敵」になるとき」(「ユリイカ」2015年10月号)など。
内容説明
1950年代から80年代までの『ゴジラ』や『モスラ』などの特撮映画の歩みをたどり、その想像力を支えた60年代・70年代のSFの動向も整理する。そして、3・11後の文化状況や『シン・ゴジラ』も射程に収め、戦後日本のポピュラー・カルチャーが社会的・政治的なものと距離を置くようになったプロセスを解析する。
目次
序章 「非政治的」な領域としてのポピュラー・カルチャー
第1章 『ゴジラ』をめぐる批評の力学―「平和への悲願」の意味
第2章 「空想科学映画」の射程―『空の大怪獣ラドン』『地球防衛軍』
第3章 現実の批判者としての怪獣・怪人―文学者の実践と「特撮映画」
第4章 SF規範をめぐる科学と政治―「SF(日本SF)」が切り捨てたもの
第5章 「軽薄」であることの意味と価値―「SF(日本SF)」、テレビ、怪獣
第6章 キャラクター消費という問題―「特撮映画」ジャンルの再編と「オタク第一世代」
終章 キャラクターは「政治的」足りうるか―近年の文学的・美術的実践と「特撮映画」ジャンル
著者等紹介
森下達[モリシタヒロシ]
1986年、奈良県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。京都大学博士(文学)。東京成徳大学人文学部助教。専攻はポピュラー・カルチャー研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。