内容説明
明治末期に生まれ、日本とドイツを往復しながら、ヴァイオリンの演奏から指揮や作曲、果ては当時のニューメディア=映画制作まで取り組んだ貴志康一。「天才」と評され、ヴァイオリンの名器ストラディヴァリウスを日本人として初めて所有し、ベルリン・フィルを25歳で指揮しながらも、わずか28歳で生涯を終えた。この若き音楽家の人生と作品、その時代背景を総合的に分析して彼の魅力に迫り、人物を通して戦前期日本の社会をも読み解く。
目次
第1部 貴志康一とは誰か(過渡期のヴァイオリニスト、その音と姿―成長の過程を通して;貴志康一が「作曲家」になるまで―学びの過程にみるその原像;ベルリンの日本人―貴志康一と「日本」の表象 ほか)
第2部 貴志康一の作品(「日本の洋楽」の音階と貴志康一の旋律;歌曲について―その変遷と貴志の原風景;ヴァイオリン曲について―ヴィルトゥオーゾの技巧と作曲の融合 ほか)
第3部 貴志康一と時代(「天才」少年少女の時代;欲望のコロニアルな対象―貴志康一の『鏡』と映画脚本『ニーナ』をめぐって;貴志康一による音楽統制論の真意)
著者等紹介
喜絵奈[カジノエナ]
東京都出身。ヴァイオリニスト。国立音楽大学卒業、オーストリア国立モーツァルテウム音楽院修士課程修了(いずれも器楽学科ヴァイオリン専攻)。現在は、ヴァイオリンの演奏と指導のかたわら、東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍。研究分野は日本近代音楽史(主にヴァイオリンの文化)、比較音楽学
長木誠司[チョウキセイジ]
1958年、福岡県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。研究分野は表象文化論、音楽学
ゴチェフスキ,ヘルマン[ゴチェフスキ,ヘルマン]
1963年、フライブルク(ドイツ)生まれ。音楽学者。フライブルク音楽大学ピアノ科卒業、フライブルク大学哲学博士(音楽学)、ベルリン・フンボルト大学で音楽学教授資格取得。東京大学大学院総合文化研究科准教授(比較文学比較文化コース)。研究分野は演奏論、近代アジアの音楽史、音楽理論史など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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