炭鉱と「日本の奇跡」―石炭の多面性を掘り直す

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炭鉱と「日本の奇跡」―石炭の多面性を掘り直す

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  • サイズ A5判/ページ数 216p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784787234384
  • NDC分類 567.092
  • Cコード C0036

出版社内容情報

現在も世界のエネルギー源の約30%を占め、東日本大震災後の電力供給の30%を火力発電が支えるように、石炭はいまなお重要な資源であり続けている。



日本では高度経済成長という「日本の奇跡」と対比させて、「危険な重労働」「忘れ去るべき暗闇」「古いエネルギー」「ノスタルジー」とイメージされることが多い炭鉱は、しかし、労働・経営のあり方、技術革新、地域社会への貢献など、日本の産業全体に多大な影響を及ぼした。



戦後日本を作り出した炭鉱の歴史と現在を、企業・自治・家族・女性・産業遺産などの視点から浮き彫りにし、グローバルに展開する世界の炭鉱とも比較して、炭鉱とそこに生きた人々の歴史的意義や炭鉱が秘める現在の可能性を明らかにする。

序 章 炭鉱から掘る日本の「奇跡」 中澤秀雄/嶋?尚子

 1 石炭は日本のどこで掘られ、産炭地はどう苦闘したのか

 2 本書の構成



第1章 炭鉱遺産――なぜ人をこんなにも引き付けるのか 木村至聖

 1 炭鉱の文化遺産化

 2 脱工業化後の世界の炭鉱遺構――ユネスコ世界遺産の背景

 3 日本の炭鉱の遺産化



コラム 現存する炭鉱施設 木村至聖



第2章 炭鉱の歴史から学べること 島西智輝

 1 「黒いダイヤ」の時代

 2 「生産第一・安全第二」

 3 「黒いダイヤ」の時代の終わり

 4 石炭産業の衰退

 5 「安全第一・生産第二」へ

 6 事業多角化のその後



コラム 炭鉱の生産組織 島西智輝



第3章 炭鉱閉山と家族――戦後最初のリストラ 嶋?尚子

 1 石炭産業の収束と離職者対策

 2 忘れられた最初のリストラ

 3 炭鉱離職者の子どもたち

 4 壮大な離職者対策と翻弄される労働者と家族



コラム 日本の石炭政策 嶋?尚子



第4章 産炭地と「自治」――夕張はなぜ破綻したのか、どこにいくのか 中澤秀雄

 1 高度経済成長を「侵食」した旧産炭地政策

 2 夕張破綻が象徴した時代転換

 3 夕張はどこにいくのか――縮小社会のフロンティア



コラム 炭鉱の身分制 中澤秀雄



第5章 炭鉱と労働運動――何を大事にすべきなのか 玉野和志

 1 忘れられた南助松と労働者の品位

 2 戦後の大争議とその歴史的教訓

 3 労働組合は何を大切にすべきか



第6章 産炭地の女性たち――「母親運動」の評価をめぐって 西城戸 誠

 1 「生命と暮らしを守る」活動と主婦会での「学習」

 2 産炭地のなかでの炭鉱主婦会



第7章 グローバルな共通言語としての炭鉱 中澤秀雄

 1 歴史を語るうえで炭鉱がもつ重要性

 2 欧州の文化資源としての炭鉱

 3 東アジアの「奇跡とその後」を語る炭鉱・鉱山



産炭地研究会による炭鉱関係文献一覧



あとがき 中澤秀雄



索引

中澤 秀雄[ナカザワ ヒデオ]
著・文・その他/編集

嶋? 尚子[シマザキ ナオコ]
著・文・その他/編集

内容説明

戦後日本を作り出した炭鉱の歴史と現在を、企業・自治・家族・女性・産業遺産などの視点から浮き彫りにし、グローバルに展開する世界の炭鉱とも比較して、炭鉱とそこに生きた人々の歴史的意義や今日の可能性を照らし出す。

目次

序章 炭鉱から掘る日本の「奇跡」
第1章 炭鉱遺産―なぜ人をこんなにも引き付けるのか
第2章 炭鉱の歴史から学べること
第3章 炭鉱閉山と家族―戦後最初のリストラ
第4章 産炭地と「自治」―夕張はなぜ破綻したのか、どこにいくのか
第5章 炭鉱と労働運動―何を大事にすべきなのか
第6章 産炭地の女性たち―「母親運動」の評価をめぐって
第7章 グローバルな共通言語としての炭鉱

著者等紹介

中澤秀雄[ナカザワヒデオ]
1971年、東京都生まれ。中央大学法学部教授。専攻は地域社会学。著書に『住民投票運動とローカルレジーム』(ハーベスト社)、共著に『平成史(増補新版)』(河出書房新社)など

嶋〓尚子[シマザキナオコ]
1963年、東京都生まれ。早稲田大学文学学術院教授。専攻はライフコース社会学、家族社会学。共編著に『現代家族の構造と変容』(東京大学出版会)、共著に『近代社会と人生経験』(放送大学教育振興会)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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kenitirokikuti

11
本書の執筆母体は2008年発足の産炭地研究会。北海道グループと早稲田の常盤研究グループがチームを組んだ▲田中正造と足尾鉱毒事件は有名だが、足尾暴動事件や炭鉱労働者の労働至誠会はマイナー。片山潜が夕張炭鉱を訪れたとき、南助松や永岡鶴蔵が炭鉱労働者を組織していた▲映画『Pride(パレードへようこそ)』(2014)。1984-5の炭鉱ストの際、ロンドンの同性愛グループがウェールズの炭鉱に多額の寄付をした。ストはサッチャーに敗れるが、労働党大会にて全英炭鉱夫組合が同性愛者の権利を守る条項に集団賛成し可決。2018/09/17

RYU

4
産炭地研究会による日本の石炭の歴史。石炭採掘が本格的になったのは19世紀後半の開港からで、はじめ外国船の燃料・アジアへの輸出品、明治時代には国内の運輸用・産業用として開発が進む。戦後になると石油へのエネルギー転換もあり閉山が相次ぎ衰退。地域振興策がとられるもハコモノ中心だった夕張は破綻に至る。一方で、炭鉱掘削の歴史は掘削・保安技術の向上に繋がった。旧産炭地の現状は様々で、常磐は温泉と既存技術という地域資源を活用したスパリゾート開発、三池・長崎は世界遺産、釧路は掘削を続け安全技術を磨くなど、地域再生を図る。2018/09/15

Kentaro

4
ダイジェスト版からの要約 常磐ハワイアンセンターは、海外事例の物まね・コピーのように思えるが、元炭鉱夫がホテルマンとなり、その娘がダンサーになり、一家総出で産業転換を果たした。実のところハワイをまねしたのではなく、常磐の村の鎮守のお祭りの延長線上に構想されていた。そして、日本の炭鉱はなくならなかった。重要な背景が二つある。一つは、新たな生産・労働・経営体系へと脱皮し、「安全第一・生産第二」を実現した炭鉱が現れた。もう一つは、技術面や管理面でいえば日本の石炭産業はアジアで最先端の位置にあったことである。2018/08/30

onepei

3
かつてこれだけ大きな産業があった、とは思うことがある。2018/09/01

takao

2
ふむ2020/02/16

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