内容説明
個人の権利を制限する一方で、「家族・家庭」や「個々人の能力・資質」までも共同体や国家に組み込むような諸政策の問題点の核心はどこにあるのか。他方で、家族や子育て、性的マイノリティを支援する社会制度の設計は喫緊の課題である。国家の過度な介入を防ぎながらどう支援を実現していくのかを、家族やジェンダー、福祉、法学の専門家がそれぞれの立場から縦横に論じる。
目次
序章 なぜ家族に焦点が当てられるのか
第1章 家庭教育支援法について
第2章 親子断絶防止法について
第3章 経済政策と連動する官製婚活
第4章 自民党改憲草案二十四条の「ねらい」を問う
終章 イデオロジーとしての「家族」と本格的な「家族政策」の不在
著者等紹介
本田由紀[ホンダユキ]
1964年生まれ。東京大学大学院教育学研究科教授。専攻は教育社会学
伊藤公雄[イトウキミオ]
1951年生まれ。京都大学・大阪大学名誉教授。京都産業大学客員教授。専攻は文化社会学、政治社会学、ジェンダー論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆう。
34
自民党が狙う改憲草案の中身の家族の規定や家庭教育支援法案の中身などから、なぜ国家が家庭教育という名で家族のあり方に干渉しようとしているのかを考察した内容です。「親学」として親のあるべき姿を描く高橋史郎(日本会議との深い関りのある明星大学教授)の理論との関りも考察されています。国家が目指す人材育成と自助・互助・共助のあり方と深い関りがあるのだと思いました。そのための家庭教育支援にSSWなどを位置付けようとする思惑があることもわかり、人権保障労働としてのSSWを対置していく必要性も感じました。2017/12/25
kenitirokikuti
11
安倍政権に顕著に現れているが、90年代半ばから、国家は子どもの育成に関して家族を信用していない傾向がある。国家が家族に対し、子どもをこう育てろと上から圧力をかけるのだ。改正教育基本法や改正学校教育法では、「資質」や「態度」を重視している。かつては主に知的な能力が重視されていた。「学習指導要領」も「取り扱うべき内容」から「達成すべき目標」と変わっている。政府が望ましいと定めた振る舞いや心構えを強く要求される。2017/12/29
aeg55
6
読み進めるにしたがって、現政権、安倍政権、自民党政権の気持ち悪さが増大してくる 単に極右である、というわけではなく、個人に身近な家族を核に、権力掌握、極右、宗教、地方創生、少子化対策など様々なモノがビジネス展開されているというところが、原因を単純に指摘しきれない 教育、養育、介護を家族という単位に押し付けるその根底には、行政のローコスト化が見える 80年前に日中戦争へと突入して行った社会状況とのているとも言えるし新たに蒸されている部分もあるとも言える2018/04/26
Miki Shimizu
4
おもしろい。でも難しい。なんか、何回も読み直しても意味がわからんところがあったー。書いた人の文章力の問題か、私の読解力の問題か、、、。まぁ、基本的には賢い人ほど難しいことをわかりやすく簡単に説明できると思っているので、私のせいでわなーい。笑。いや、でも、法律の条文は簡単に書きようもないか。じゃあ、誰のせいでもなーい。笑2017/12/13
カモメ
3
法律の草案等を検証していく内容。離婚後面会交流の実施率が40%であるのに対し、養育費の支払いは20%を切っているが親子断絶防止法は養育費や暴力防止といった視点に欠けている。婚活は交付金や補助金を求めてた民間企業も行っているが部落、セクハラ、個人情報の取り扱いという問題をはらむ。ライフプラン教育は産めよ殖やせよ教育に近づいており、産むか産まないかを自分で決める、性暴力や避妊の情報もない。結婚は個人主義に基づいているが選択的夫婦別姓には反対されイエの復活が求められているというのが興味深い。2021/01/09