青弓社ライブラリー<br> 「心の闇」と動機の語彙―犯罪報道の一九九〇年代

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青弓社ライブラリー
「心の闇」と動機の語彙―犯罪報道の一九九〇年代

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  • サイズ B6判/ページ数 171p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784787233660
  • NDC分類 070.15
  • Cコード C0336

内容説明

地下鉄サリン事件や神戸連続児童殺傷事件で急速に広まり語られるようになった「心の闇」。1990年代の犯罪をめぐる新聞報道を詳細に追い、その語りを「動機の語彙」という視点から読み解いていく。そして、「心の闇」という言葉が犯罪とどう結び付き、その行為主体=「犯人」のイメージをどう作り上げたのかを、行為と動機の関係性から分析する。2000年代の犯罪報道ではすでに常套句と化している「心の闇」。しかしその言葉は、他者の理解しがたさを強調することで自己と他者の結び付きに亀裂をもたらしている。「心の闇」に私たちの社会は何を見ようとし、またそれを語ることでどのような可能性を排除してきたかを問い、他者との関係性をどう再構築していくのかを明らかにする。

目次

第1章 「心」を「闇」として語るということ(犯罪報道と秩序意識;「動機の語彙論」という視点 ほか)
第2章 「心の闇」の浮上―酒鬼薔薇事件(一九九七年)までの新聞報道から(「闇」として語られ始めた「心」;露出する闇―地下鉄サリン事件(一九九五年) ほか)
第3章 「動機」が「わからない/わかる」と言うこと―「酒鬼薔薇聖斗」をめぐる大学生たちの語りから(「心」は本当に「闇」のなかなのか?;「「どうして」を教えて」―ある新聞記事に基づく“問いかけ”の試み ほか)
第4章 「心の闇」の定着―一九九八‐二〇〇〇年の新聞報道から(リンクの広がりとイメージの定型化―一九九八‐九九年;母親たちの「心の闇」―音羽幼女殺害事件(一九九九年) ほか)
第5章 対話としての動機の語り(“他者”との遭遇;「物語モード」と「論理‐科学的モード」 ほか)

著者等紹介

鈴木智之[スズキトモユキ]
1962年、東京都生まれ。法政大学社会学部教授。専攻は理論社会学、文化社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

うえ

10
「「心の闇」は、2000年以降も語り続けられている…新聞記事についてみれば、この言葉は、数のうえではむしろ1990年代を上回る頻度で使用されている。だがそれはどこまで「時代の表徴」であり続けているだろうか…しかし、全体としては、その使用頻度に反比例して表現としてのインパクトは弱まっている印象がある。「心の闇」は慣用句となり、その語りはこの語彙の登場時期に伴っていたような"熱気"を失っているように見える。そのラベルは、「動機が不可解である」ことを示す記号としてさまざまな事件に貼り付けられている」2018/11/06

モルテン

5
犯罪の動機を「心の闇」という言葉で表現することによって、私たちは、<他者>とどのような関係を結ぼうとしているのだろう――という問いに貫かれた一冊。「動機」はそれを語る側と受け取る側との相互行為で構築されていくもの、という考えになるほどと思った。そして、それは(動機の)物語を作るということでもある。本書の最後のくだりにちょっと感動。たとえ「虚構」だとしても、私たちは<他者>と対話し、物語を作り続けなくてはならない。2014/02/14

yamikin

4
「俺を怒らせたのでアイツを殺しました」という殺人者の証言が不可解なのは、彼なりの理由付け(起動原因)が、周囲(社会)からすると「でもだからといって殺すのは理解できないよ!」というツッコミ(構築原因が理解できない!というツッコミ)を受けるからだ。あるいは「アイツは○○病だから、ロリコンだから幼女を殺したんだ」という「分析」もまた、本人の殺人の動機を説明することにはなっていない。ロリコンが即殺人犯にはならないからだ。こんな風に「動機」について分析してるんだけど、ちょっと当たり前すぎてなんだか拍子抜けだったな2014/01/20

chaco

2
酒鬼薔薇事件の新聞の分析を通して、犯罪者を理解できない他者として自分たちとは一線を画す態度を指摘する。筆者もあとがきで書いているように、今は理解することを最初から諦めているところがある。当時はまだ理解しようとする態度があったのだと逆に新鮮に感じた。2014/05/22

yam6

1
犯罪者の動機を理解することを放棄したとき、「心の闇」という言葉が使われる。著者は、精神医学の専門家などの解説を待つという態度ではなく、「物語」として犯罪者の行為を了承していく作業を続けるべきだと綴る。そして、自分たちがいる「普通」のひとびとの世界から、犯罪者をはじき出すのでなく、社会の一員としての犯罪者がその犯罪行為に至った過程をナラティブに共有しようという努力を続けるべきだという。はっきりいって、現代の社会では到底受け入れられない主張だろう。2016/08/20

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