内容説明
経済不況、雇用の流動化、新自由主義の台頭、敗戦後五十年、インターネットの普及、趣味の多様化―「失われた十年」として記憶される一九九〇年代の一面的な理解にあらがい、浜崎あゆみ、アイドル、『セーラームーン』『スワロウテイル』、SF・サイコ小説、神戸連続児童殺傷事件などを読み込みながら、この時代がはらんでいた可能性をすくい上げる。
目次
序章 失われざる十年の記憶―「九〇年代」をつなぎとめるために
第1章 郊外空間の反転した世界―『空中庭園』と住空間の経験
第2章 夢の跡地に見た夢は―『スワロウテイル』の近未来都市
第3章 侵食する怪物―サイコ・ホラー的想像力と『CURE(キュア)』
第4章 アレゴリカルな暴力の浮上―「酒鬼薔薇聖斗」と物語の条件
第5章 偽史への意志―歴史修正主義と『五分後の世界』
第6章 銀水晶に解放された関係性―美少女戦士セーラームーンに欲望するファン
第7章 彼女たちの憂鬱―女性アイドル“冬の時代”再考
第8章 「居場所」をめぐって―浜崎あゆみに節合する時代の言葉
著者等紹介
鈴木智之[スズキトモユキ]
1962年、東京都生まれ。法政大学社会学部教授。専攻は理論社会学、文化社会学
西田善行[ニシダヨシユキ]
1977年、千葉県生まれ。法政大学社会学部非常勤講師。専攻はメディア文化論、ポピュラー文化論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hiratax
1
70年代〜80年代初頭生まれの若手研究者を中心とした論考。「スワロウテイル論」に惹かれる。ヒップホップやらヤンキーやらミクロでドープな部分より、社会全体、日本全体の空気を敷衍している論考が多く置いてけぼり感がなかった。2013/03/04
女神の巡礼者
1
もっとカルチャー系の評論かと思って読みましたが、けっこう難解な社会学の論文集でした。 ところで、社会学って何を目的とする学問なのでしょう。各論文で興味深い発見もありましたが、だから今を生きる私たちがどうあるべきかとか、未来をどうするべきなのかというような視点を感じられず、なんだか中途半端な読後感でした。2012/12/27