内容説明
100周年を目前に控え、親子3代のファンをもつ宝塚歌劇団。ファンは劇場前で入り待ち・出待ちをして、ひいきのスター・生徒を見に同じ公演に何度も通い、お茶会にも参加する。ファンクラブの組織形態、チケットの確保と配布、統制がとれた拍手、ガードの実際、会服とグッズなどのファンクラブの実情をわかりやすく解説し、ファンの側がファンクラブの活動をどう捉えているかも丁寧に紹介する。いい席をめぐるファン同士の駆け引きやスター・生徒へのさまざまな距離感も描きながら、非合理に見えるファンの行動がきわめて合理的に成り立っていてある「秩序」を形成していることを明らかにする。ファンがスターを作る過程に迫るファン文化論。
目次
序章 宝塚歌劇団の転換―一九九〇年代から二〇〇〇年代へ
第1章 宝塚スターシステムとファンクラブ
第2章 ファンクラブの活動内容―ファンクラブ側から見て
第3章 ファンクラブ会員の役割―ファン側の視点
第4章 舞台と客席をつなぐファンクラブ
第5章 ファンクラブの意味
著者等紹介
宮本直美[ミヤモトナオミ]
1969年生まれ。博士(社会学)。東京大学文学部社会学研究室助手を経て、立命館大学文学部准教授。専攻は文化社会学・音楽社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちくわ
20
この本は、タカラジェンヌ個人の「ファンクラブ」を体験した著者が、その仕組みや歌劇団との関係について、論文にまとめたものです。「どうやって、完全なボランティアでこのような秩序だった優秀なシステムが成り立っているのか」を探ります。すごい仕組みです。(☆3)2019/03/23
こよみ
18
期間があるから熱狂できるというのは「アイドルは終わりが見えるから応援できる」っていうのを思い出す2013/11/15
まど
17
テレビで見てから、ずっと宝塚ファンは不思議な存在だった。何が楽しくて時間もお金もつぎ込んでお尽くしするんだろう?という謎は、本書を読んで理屈ではわかったけれど、やっぱり不思議な存在のままかも。スターはファンクラブとどんな気持ちで関わっているんだろう。スター視点も読んでみたい。息苦しそうなすごい世界だ。関西人の宝塚の偉い人が、コアなファンをいいようにつかっているように見えてしまう。2011/08/01
むっちょむ
10
ファンクラブは、一種の宗教みたい。独特。少しでもよい席でとか、少しでも生徒(タカラジェンヌさんをこう呼ぶのも独特)の地位をあげたいとせっせとグッズを買うとか、もうすっかりカモ、でもどっぷりハマると楽しそう。タカラジェンヌさんを宝塚の、その中の演者として、夢を売るフェアリーとして、というのがファンの人は一番気になる視点なのかな?!私は、今気になってるタカラジェンヌさんが宝塚やめられてから、男役からどのようにシフトチェンジして女性に戻られるのか、やめたあとどういう人生を送られるのか、という方が気になる。2015/08/28
Miho Haruke
5
スター入り待ち出待ちのガード、チケット割り振り、お茶会の運営、卒業セレモニーの差配…奇異なまなざしで見られることもある宝塚スターファンクラブだが、彼女たちの世界は、熱狂的な憧れどころか非情な利害均衡と微妙な人間関係をコントロールする、きわめて社会性の高い組織である。特にファンクラブ代表の企業経営者としての手腕には脱帽。元ファンクラブ会員だった社会学者による観察と分析であり、批判でも礼賛でもない事務的な筆致で描かれた、知られざる世界の面白さにあっという間に読んでしまう。しかもそれが全員女性(コメントに続く)2014/11/03