内容説明
男性学は何を目指しているのか、今後、どのような展開を見せていくのか―。1980年代後半から、フェミニズムの隆盛をバネにした女性をめぐる議論の成熟を背景として、「男らしさ」「男性性」とはいったい何なのか、それに息苦しさを感じるときどう解消していくのかが議論されはじめた。その議論の内容を簡明にまとめて男性学の基本的な視点を確認したうえで、新たな観点を示したロバート・W・コンネルの議論を詳細に紹介する。そして、男女雇用機会均等法の制定や90年代後半からのフェミニズムに対するバックラッシュの流れのなかで、男性学が何を招来し、今後どう展開していくのかを、仕事、定年退職後の居場所、「オタク」や恋愛・結婚などの具体的な素材から照らし出す格好の男性学入門書。
目次
序章 男性学の新展開
第1章 「男性問題」とは何か
第2章 複数形としての男性性
第3章 現代日本社会の男性と労働
第4章 地域に男性の居場所を作る
第5章 オタクの従属化と異性愛主義
第6章 揺らぐ男性性と恋愛/結婚の行方
著者等紹介
田中俊之[タナカトシユキ]
1975年生まれ。学習院大学・首都大学東京・聖学院大学・中央大学・武蔵大学・山梨大学・和光大学非常勤講師。博士(社会学)。専攻は社会学・男性学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nbhd
12
どのへんが【新展開】なのかというと、男性学研究者のコンネルという人の理論をなぞっているとこだ。コンネルさんの話をざっくりとまとめると、①男性性は複数形masculinitiesとあらわす。つまり「ザ・男」のような普遍的な男性性は存在しないということ。その上で、②複数形の男性性は大別すると、A「ヘゲモニックな男性性」とB「従属的な男性性」と分類できる。Aのヘゲ男は、フェミニズムの考察批判の対象となりがち。一方、僕が関心を持つ「弱めな男(非モテ)」は、Bの従属的な男性性のほう。という、ひとまずの整理ができた。2021/02/01
富士さん
4
男性学の確立をともなわないフェミニズムは、反ジェンダー主義として不完全で、単にゴネてるだけと矮小化されてしまうこと必至です。社会規範として定着したジェンダーの枠組みを流動化させることは、女性が公正な権利を主張できると同時に、男性が不当な義務を放棄できることを意味します。つまり、ちゃん交渉しないとより悪くなる可能性すら孕んでいるのです。反ジェンダー主義で得られるのは公正な負担を探り、新たな合意を得る事であって、負担を無くしてくれる魔法の呪文ではない。このことをはっきり示すのが男性学確立の意義だと思います。2022/03/31
まあい
4
男性学について、最初に読むのにふさわしい一冊だろう。すこしケチをつけるとすれば、先行研究が少ないからこそ、在野の評論や影響力のあった書籍なども先行研究に組み込んでほしかった。それでも、コンネルの「ヘゲモニックな男性性」や「複数の男性性」などの概念をわかりやすく導入しており、全体としては手堅い良著としてまとまっている。オススメできる一冊。2016/06/27
;
3
男性性が複数で、劣位に置かれる者が必然的にあらわれるのは確かだとしても、資本主義や婚姻制度など今の社会構造を根本的に否定することなく男性性を考えていても、ジェンダー間の不均衡と向き合うことはできないと思う。2019/12/22
hakootoko
3
https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/26813/3/shakaikg0060600010.pdf2018/05/25