出版社内容情報
戦後日本で、経済優先の都市開発が生み出した無味乾燥な〈景観〉を私たちはどのように内面化してきたのか。生活者の主体性を排した都市計画や、理念への羨望と現実への絶望の間で循環する議論を回避して、近代日本での〈景観〉の形成とその受容の過程をたどる。
はじめに 金子 淳
第1章 経済発展と荒廃する景観 松原隆一郎
1 景観は何によってできているのか――経済の観点から
2 事例
3 「都市再生」という名の景観破壊
4 曙光
5 質問に答えて
第2章 近代日本における風景論の系譜 荒山正彦
1 風景論の系譜とは何か
2 志賀重昂『日本風景論』をめぐって
3 風景のリスト
4 国立公園制度のもとで語られる風景論
5 日本新八景による郷土風景の誕生
6 植民地の風景論へ――まとめにかえて
第3章 近代日本の風景意識 佐藤健二
1 今日の「風景意識」の特質
2 認識を深めるためのいくつかの論点
第4章 都市の景観/郊外の景観 若林幹夫
1 景観と社会
2 現代都市の景観
3 郊外の風景
4 都市/郊外の景観が示すもの
第5章 「良い景観」とは何か 安彦一恵
1 倫理学の立場から
2 景観紛争
3 景観(風景)とは何か
4 歴史主義的美感とモダニズム的美感
5 第三の基本タイプとしてのポストモダニズム的美感
6 自由主義を原則とする紛争
内容説明
乱立する高層建築、街中に張り巡らされた電線、均質な郊外風景。戦後の日本で、経済政策優先の都市開発が生み出した無味乾燥な“景観”を私たちはどのようなものとして受容してきたのか。マンション景観訴訟や景観法、景観行政などの従来の政策や議論が見落としがちな景観の社会的な意味や歴史的な形成過程について考察して、景観を語る言説に刻まれている歴史性や政治性を具体的に浮き彫りにする。生活者の主体性を排した都市計画や、理念への羨望と現実での絶望との間で循環する議論を回避して、近代日本で“景観”がどのように形成され変容し、そしてその過程でそれをどのように内面化してきたのかを探ることで、新たな景観論を展開する論考集。
目次
第1章 経済発展と荒廃する景観(景観は何によってできているのか―経済の観点から;事例 ほか)
第2章 近代日本における風景論の系譜(風景論の系譜とは何か;志賀重昂『日本風景論』をめぐって ほか)
第3章 近代日本の風景意識(今日の「風景意識」の特質;認識を深めるためのいくつかの論点)
第4章 都市の景観/郊外の景観(景観と社会;現代都市の景観 ほか)
第5章 「良い景観」とは何か(倫理学の立場から;景観紛争 ほか)
著者等紹介
松原隆一郎[マツバラリュウイチロウ]
1956年、兵庫県生まれ。東京大学教授、専攻は社会経済学、相関社会科学
荒山正彦[アラヤママサヒコ]
1962年、岐阜県生まれ。関西学院大学助教授、専攻は文化地理学、観光学
佐藤健二[サトウケンジ]
1957年、群馬県生まれ。東京大学助教授、専攻は歴史社会学、社会学方法論
若林幹夫[ワカバヤシミキオ]
1962年、東京都生まれ。筑波大学教授、専攻は社会学、都市論、メディア論
安彦一恵[アビコカズヨシ]
1946年、石川県生まれ。滋賀大学教授、専攻は倫理学
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