「日本スゴイ」のディストピア―戦時下自画自賛の系譜

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「日本スゴイ」のディストピア―戦時下自画自賛の系譜

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  • サイズ A5判/ページ数 195p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784787220653
  • NDC分類 210.7
  • Cコード C0021

出版社内容情報

「日本スゴイ」の大合唱があふれる現在だが、1931年の満洲事変後にも愛国本・日本主義礼賛本の大洪水が起こっていた。「礼儀正しさ」「勤勉さ」などをキーワードに、戦時下の言説に、自民族の優越性を称揚する「日本スゴイ」イデオロギーのルーツをたどる。

はじめに



第1章 「日本主義」大ブーム到来

 「日本スゴイ」ネタの原型

   「日の出」編集部編「世界に輝く 日本の偉さはこゝだ」(〔「日の出」一九三三年(昭和八年)十月号付録〕、新潮社)

 日本主義は全人類の奉ずべき道徳精神である

   井乃香樹『日本主義宣言』(建設社、一九三四年〔昭和九年〕)

 日本人の底力・粘り強さは米食からくる

   中山忠直『日本人の偉さの研究』(章華社、一九三三年〔昭和八年〕)

 お墓マニアが語る日本精神

   平野増吉『日本精神とお墓』(小森繁雄、一九三六年〔昭和十一年〕)

 満洲事変で「日本人」はどう変わったのか

   高橋三吉/日比野正治講述、大阪毎日新聞社編「日本精神に還れ」(大阪毎日新聞社/東京日日新聞社、一九三四年〔昭和九年〕)

 「天才帝国日本」の栄光と崩壊

   池崎忠孝『天才帝国日本の飛騰』(新光社、一九三三年〔昭和八年〕)

 混沌化する「日本精神」諸派

   池岡直孝『日本精神の実現』(章華社、一九三五年〔昭和十年〕)

 恐るべき「君が代」の秘密

   鹿子木員信『日本精神の哲学』(文川堂書房、一九四二年〔昭和十七年〕)

 全国民を「日本国民産業軍隊」に改造せよ!

   高松敏雄『真日本主義国民改造と道義大亜建設』(刀江書院、一九四一年〔昭和十六年〕)

 「日本主義」を掲げ御用組合結成

   神野信一『日本主義労働運動の真髄』(亜細亜協会出版部、一九三三年〔昭和八年〕)



第2章 「よい日本人」のディストピア

 「日本人に生まれてよかった」?

   新居格編『支那在留日本人小学生 綴方現地報告』(第一書房、一九三九年〔昭和十四年〕)

 学校教師を「ミニ天皇」化する「日本的学級経営」

   永井煕『週間単位 尋六の学級経営』(第一出版協会、一九三九年〔昭和十四年〕)

 学校は児童を日本的に鍛える道場である

   野瀬寛顕『新日本の学校訓練』(厚生閣、一九三七年〔昭和十二年〕)

 掃除の時間になると、校長やおら壇上に立ち……

   土方恵治『行の訓育』(モナス、一九三九年〔昭和十四年〕)

 小学生の裸乾布摩擦に目を細める文部省視学官

   草場弘『皇民錬成の哲理』(第一出版協会、一九四〇年〔昭和十五年〕)

 聖戦を担う皇国女子を育成せよ!

   下村寿一『聖戦完遂と女子教育』(日本経国社、一九四四年〔昭和十九年〕)

 日本が世界の中心でなければならない!

   鈴木源輔『戦時国民教育の実践』(帝教書房、一九四二年〔昭和十七年〕)

 宇宙的スケールをもった「皇国教育」がスゴイ!

   和歌山県女子師範学校附属小学校編『皇道日本教育の建現』(四海書房、一九三五年〔昭和十年〕)

 護国の英霊をつくるための「師魂」

   竹下直之『師魂と士魂』(聖紀書房、一九四三年〔昭和十八年〕)

 日本の少国民は、世界でいちばん知能がよいのですよ

   葉山英二『日本人はどれだけ鍛へられるか』(新潮社、一九四三年〔昭和十八年〕)

 修学旅行で「神国日本」を実感

   関西急行鉄道パンフレット「参宮の栞」(一九四二年〔昭和十七年〕四月)

受験で試される愛国心

  「受験と学生」調査部編『学生受験年鑑 昭和十七年版』(研究社、一九四二年〔昭和十七年〕)

 勝つために今日も体力向上の実践をしよう

   柳澤利喜雄『決戦体力の目標』(〔生産文化叢書〕、みたみ出版、一九四四年〔昭和十九年〕)

 集団登校のお作法があった日本スゴイ

 選挙権年齢引き下げを先取りした大日本帝国の有権者教育がスゴイ



第3章 礼儀正しい日本人――国民礼法の時代

 用便は便所にすべきで、庭や路傍にすべきではない

   藤井本三郎『昭和国民作法書』(礼法普及会、一九二八年〔昭和三年〕)

 祝祭日には赤飯炊いて

   大日本聯合婦人会/大日本聯合女子青年団編『女性非常時読本』(社会教育会館、一九三三年〔昭和八年〕)

 よい子の諸君! カツアゲと痴漢には気をつけよう

   東京府中等学校保導協会『保導パンフレット 第一輯』(東京府中等学校保導協会、一九三七年〔昭和十二年〕)

 自由主義を撲滅し、交通道徳を守りましょう

   「少年団研究」一九四〇年(昭和十五年)十月号・十二月号(大日本少年団連盟)

 弁当箱は左の手に持つ!

   東京高等師範学校附属国民学校初等教育研究会編『国民科修身教育の実践――国民学校礼法教授要項案』(大日本出版、一九四一年〔昭和十六年〕)

 朝礼は心を込めて

   牧野靖史『国民学童 礼法の実践――国民礼法詳解』(国進社出版部、一九四二年〔昭和十七年〕)

 御真影はどのように並べるのが正しいか

   川島次郎『学校礼法 儀式篇』(目黒書店、一九四二年〔昭和十七年〕)

 学校掃除は錬成組織づくりから

   東京高等師範学校附属国民学校初等教育研究会編『研究紀要』第一輯(東京高等師範学校附属国民学校初等教育研究会、一九四三年〔昭和十八年〕)

 服従は美徳である

   甫守謹吾『国民礼法 産報版・男子用』(金港堂書籍、一九四二年〔昭和十七年〕)

交通マナー啓蒙に「東亜の盟主」を持ち出す日本スゴイ



第4章 よく働く日本人――勤労哲学の教化と錬成

 兵士は戦場に死し、工員は職場に斃る

   原了『決戦下の青少年』(協和書房、一九四三年〔昭和十八年〕)

 「日本的勤労観」の暗黒

   難波田春夫『日本的勤労観――産業報国運動の理論的基礎付けの試み』(〔「産報理論叢書」第一巻〕、大日本産業報国会、一九四二年〔昭和十七年〕)

 報酬を求めるのは日本固有の精神ではありません

   小島徳弥『働く女性の力』(国民教育会出版部、一九四二年〔昭和十七年〕)

 金銭のために働くのは、金銭の奴隷にすぎないいやしい根性

   上野?一『み国のために働く小産業戦士の道しるべ』(黒髪社、一九四三年〔昭和十八年〕)

 「お国のため」は「自分のため」

   笠原正江『働く婦人の生活設計』(〔勤労青年文化叢書〕、東洋書館、一九四二年〔昭和十七年〕)

 神国日本の有給休暇

   全国産業団体連合会編『勤労管理研究』(大日本産業報国会、一九四二年〔昭和十七年〕)

 勤労青少年の「不良」がスゴイ

   大日本産業報国会編『産業青少年不良化防止対策』(翼賛図書刊行会、一九四三年〔昭和十八年〕)

   厚生省労働局/職業局編「徴用工員錬成記録」(重要事業場労務管理研究部会、一九四二年〔昭和十七年〕九月)

 海外にはばたく「大東亜就活」

   三平将晴『共栄圏発展案内書』(大日本海外青年会、一九四四年〔昭和十九年〕)



第5章 神がかり日本に敗戦はない

 大東亜皇道楽園の出現

   桑原玉市『大東亜皇化の理念』(〔「国防科学研究叢書」第一輯〕、富士書店、一九四二年〔昭和十七年〕)

 大東亜戦争の神話的意義

   大串兎代夫『大東亜戦争の意義』(〔「教学叢書」第十二輯〕、文部省教学局、一九四二年〔昭和十七年〕)

 神の国には敗戦はない

   塩沢元次『日本必勝論』(駸々堂、一九四三年〔昭和十八年〕)

 不逞思想の持ち主は南島へ「流刑」

   大蔵公望「大東亜共栄圏の政治建設」(日本外政協会編「外交評論」一九四二年〔昭和十七年〕四月号、日本国際協会)

   陸軍省軍務課「思想犯経歴者南方に収容する件」(一九四二年〔昭和十七年〕八月十四日付)

 「魚を食ふから日本は強い」!

   中村吉次郎『日本人と魚食』(〔月明文庫〕、月明会出版部、一九四三年〔昭和十八年〕)

 文部省の公式「日本スゴイ」本のブラックぶり

   文部省教学局編『臣民の道』(文部省教学局、一九四一年〔昭和十六年〕)



参考文献



あとがき

早川 タダノリ[ハヤカワ タダノリ]
1974年生まれ。フィルム製版工などを経て、現在は編集者として勤務。ディストピア好きが高じて20世紀の各種プロパガンダ資料蒐集を開始。著書に『「愛国」の技法』(青弓社)、『神国日本のトンデモ決戦生活』『原発ユートピア日本』(ともに合同出版)などがある。「虚構の皇国blog」(http://d.hatena.ne.jp/tadanorih/)などでも発信中。「Twitter」アカウントは@hayakawa2600

内容説明

テレビや雑誌でやたら目につく「日本スゴイ」の大合唱。「八紘一宇」や「日本人の誇り」を煽る政治家まで現れた。実は1931年の満洲事変後にも、愛国本・日本主義礼賛本の大洪水が起こっていた。「日本人の礼儀正しさ」や「勤勉さ」などをキーワードとして、戦時下の言説に、「日本スゴイ」という自民族の優越性を称揚するイデオロギーのルーツをたどる。

目次

第1章 「日本主義」大ブーム到来(「日本スゴイ」ネタの原型;日本主義は全人類の奉ずべき道徳精神である ほか)
第2章 「よい日本人」のディストピア(「日本人に生まれてよかった」?;学校教師を「ミニ天皇」化する「日本的学級経営」 ほか)
第3章 礼儀正しい日本人―国民礼法の時代(用便は便所にすべきで、庭や路傍にすべきではない;祝祭日には赤飯炊いて ほか)
第4章 よく働く日本人―勤労哲学の教化と錬成(兵士は戦場に死し、工員は職場に斃る;「日本的勤労観」の暗黒 ほか)
第5章 神がかり日本に敗戦はない(大東亜皇道楽園の出現;大東亜戦争の神話的意義 ほか)

著者等紹介

早川タダノリ[ハヤカワタダノリ]
1974年生まれ。フィルム製版工などを経て、現在は編集者として勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

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めろんラブ 

64
先の戦時下、国民はどのように洗脳されたのか。その一端を知ることができた。タイトルからもうかがい知れるように、「自国礼賛が凄すぎてウケるんですけど」といった体で小バカにしつつ批判的に語られた一冊。軽い語り口とは裏腹に、収集した資料の膨大さからも、筆者の真摯な姿勢が見うけられる。いつの時代もプロパガンダ的な活動はあるけれど、日本国(民)は他より優れているという言説が堂々とまかり通るようになった時には既に・・・という危機意識と共に、もしや今も?と冷や汗。「戦争が廊下の奥に立つてゐた」(渡辺白泉)を思い出しつつ。2017/03/13

ヨーイチ

44
実際に手に取ったのは朝日文庫。著者のスタンスを知っていれば、内容は想像がつく。大昔の話なので「今とは関係ない」「昔は遅れてた」って言ってしまえばそれまで。昨今の「日本スゴイ」 探しの根底に戦前の翼賛体制下での活動が有ると著者は主張している。多分そうなのだろう。全く役に立たず、気の重い運動、主張が延々と続く。再確認したのは公的機関、外郭団体が挙って皇国史観から導き出された理屈に従って、粛々と「仕事」をして来たって事か。こうなっちゃうと個人の思想なんて笹の小舟であろう。続く2019/07/18

おかむら

43
戦前のトンデモ本(今から見ると)の数々を紹介。当時は本気。どうかしてるぜ。そして今も同じこと主張し続けている一群がいる怖さ。万世一系の天皇がいる日本はよその国より優れてる、って私にはサッパリわからんよその理屈。2016/09/22

oldman獺祭魚翁

34
図書館本 HONZで紹介されていてこれは読まなくてはと思って借りてみた。最近テレビのバラエティー等で、外人を集めて日本はスゴイと持ち上げる傾向の番組を見掛る。ゴールデンタイムに流しているんだから視聴率はそれなりに稼いでいるんだとは思うけど、なんとなく「ケツがムズムズする」(失礼)居心地の悪さを感じていた。同じ傾向は本屋でも新刊書として見かけるし、ネットを見れば似たようなエピソードが垂れ流しになっている。僕は別に自虐史観を支持する積りもないし良いとは思っていないが、それなら「進め一億火の玉だ」の頃は…続く2016/08/22

更紗蝦

29
この本の中で紹介されている「戦時下の自画自賛の言説」が、現在は影も形もないのであれば、「当時は非常時だから仕方なかったのかな…」と同情する気持ちも多少は生じてきますが、戦時下でもないのに現在でも立派に残っていることが心底恐ろしいです。特に、「労働=奉仕」という価値観は、景気が悪くなったから「復活」したというわけではなく、景気が良かったバブルの頃にも強固だったわけで、職場を「戦場」、労働者を「産業戦士」とみなした戦時中の価値観は、「24時間戦えますか」というリゲインのCMソングを思い出さずにはいられません。2016/10/11

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