痛みと怒り―圧政を生き抜いた女性のオーラル・ヒストリー

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痛みと怒り―圧政を生き抜いた女性のオーラル・ヒストリー

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  • サイズ A5判/ページ数 197p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784750323312
  • NDC分類 367.2
  • Cコード C0036

出版社内容情報

地域研究による「人間の安全保障学」の構築のアンブレラ・プログラムとして、2005年2月に大阪外語大学グローバル・ダイアログ研究会主催で行われた国際シンポジウムをもとに編まれた一冊。軍政時代のチリ、スハルト政権下のインドネシア、アパルトヘイト体制下の南アフリカ共和国という3つの異なる地域で圧政による過酷な弾圧を受けた3人の女性の語りと、日本人研究者のレスポンスをとおして、生々しい暴力の記憶が浮き彫りにされる。

はじめに──女の語り(武田佐知子)
【基調講演】女たちが暴力の記憶の淵から立ち上がるとき(楠瀬佳子)
《セッション1》チリ
 【背景説明】チリ──軍事政権期までの道のり(千葉 泉)
 【語りとレスポンス】暴力と貧困に立ち向かう──軍政下のスラムを生きた女たち
  (語り:マリア・ゴンサレス・ガティカ、レスポンス:千葉 泉)
《音楽の交感》イスパノアメリカの音楽──支配と差別の彼方に咲いた混血の花
 (演奏:ボセス・デル・スール)
 解 説(千葉 泉)
 曲目解説
 歌 詞(対訳)
《セッション2》インドネシア
 【背景説明】インドネシア1965年事件(松野明久)
 【語り】ゲルワニ活動家に対する軍の暴力に関する証言(レスタリ)
 【レスポンス】淫らで残忍な女たち──インドネシア新秩序の反ゲルワニ・プロパガンダ(松野明久)
 【資料】女が政治囚になったとき(ジョセファ・スカルティニンシ、訳:亀山恵理子)
《セッション3》南アフリカ共和国
 【背景説明】アパルトヘイトと日本──歴史認識の重要性(竹村景子)
 【語り】過去からのスナップ写真──新しい未来を築くために、過去の痛みを認めること
  (語り:シャミン・ミーア、訳:坂本利子)
 【レスポンス】さまざまな暴力の存在に気づき、反対の声を上げること──私たちの世代の責任とは(竹村景子)
「基調講演」と「語り」に対する質疑応答
あとがき(松野明久)
参加者略歴

はじめに──女の語り(武田佐知子)
 グローバル・ダイアログ研究会は、大阪外国語大学の有志で構成されている地域横断的な研究会である。
 ジェンダーはもちろんのこと、開発、環境、平和、人権といった近年関心を集めているテーマを、歴史学、文学、社会学、文化人類学、開発学、環境学など、外大で研究を続ける私たちが、分野を超えて共同研究、または研究交流を行なうために、平成15年に発足した。大阪外大はかねてより語学を生かして地道な地域研究を行なってきたことで知られており、またそれを誇りとしているが、この地域と地域を結び、より大きな枠組みで世界を見つめ直そうというのがこの研究会の狙いである。外大でのこれまでの蓄積を活かし、その研究の成果を世界に発信し、またそうした環境において活気ある教育を外大において実現していくために、である。現代のような時代だからこそ、ダイアログ(対話)は、そうした知的共同作業を象徴するキーワードと考えたい。
 私は大阪外国語大学に勤める身だが、実はあまり外国語が得意ではない。むしろ外国語ができないことを公言してはばからない、唯一人の教員かもしれない。
 私は文化人類学者ではなく、しかも日本古代史が専攻で、文献史料を主として扱う、デスクワーク中心の、文献史学者である。しかし衣服史を考えるという研究上の必要から、西南中国や東南アジアの少数民族の居住域で、時にフィールドワークを試みることがある。そしてそのたびに、二重三重の言葉の壁に阻まれて、研究の限界を感じざるをえなかった。
 通訳を連れて少数民族の村に入るのだが、そこでは独自の言語が通用している。連れて行った通訳にも完全には解しえない、彼らの世界の言語に、日本語で問いかけ、それを通訳の言語を介して、意味が完全に通じているのではないことを感じながら、彼らの言葉での、彼らの語りを聞き取っていく……。その語りの意味を私が理解するためには、通訳の言葉を媒介として、さらにそれを日本語に読み直すという手続きが必要である。つまり言葉は、私の口を発してから、伝言ゲームのように、いくつもの高いハードルを超えて、再び私のもとに戻ってくるのだ。そこで一体どこまで、私の意図した問いからの、彼らの語りが得られたといえるのだろうか? 真の対話が成り立っているといえるのだろうか? 問いと語りの間の齟齬、隔たり、何か夾雑物のあるようなもどかしさ、結果として違和感のある調査になってしまうあと味が、常につきまとっていた。
 イヌイットの世界では、白という色を表わす40種もの違う言葉があるという。同じように日本では、草木のアオ、空や海のアオを表わすために、数十の違う言葉を使い分けてきた。一面の雪の白、氷の透明な白に囲まれた生活のなかでこそ、白の違いが意識され、みどり多い自然に囲まれた日本列島だからこそ、その微妙な色あいの差を識別してきた。そうした民族ごとの、個々の環境のなかで培われてきた価値観や美意識までをも、等身大感覚で受け止めることなしには、真の対話が不可能であることは自明であろう。
 さらにいえば、発話者の設問も、話者の棲む世界に対する内在的理解に発した問いであることが不可欠である。
 突き詰めていえば、話者と、そして対話を媒介する通訳と、対話者の三者が、同じ価値観を共有してはじめて、真の対話が成り立つのだといえよう。
 そこに大阪外大の出番がある。外大の教員は、世界各地をフィールドに、得意の言語運用能力を駆使して、しっかり土地に腰を据えて、生活のなかに身を置き、溶け込んで、その地の人びととともに感じ、考え、行動をともにしている。そうした環境でこそ、対話者の内在的な理解が可能であろう。
 今地球の裏側で、確かに息づいている人たちが居る、女たちが居る。同じ女である外大の女性教員たちから、そうした世界各地の女たちの話を聞くのは、本当に興味深かった。それは私が現地に行って、通訳を介してもどかしく言葉を交わして得たものより、はるかに重みを持ったものであったりするのだ。
 私は、世界各地の女性たちの生きざまを、等身大感覚でとらえて語る外大女性教員たちの話を、独り占めしておくのはもったいないと、これを学生たちにも伝えたいと思った。そして毎年1回、女性教員有志がリレー方式で講義を担当する総合科目「女性学」が始まった。12年前のことである。同時に担当女性教員有志の組織、「大阪外国語大学女性研究者ネットワーク」を発足させた。
 このネットワークは、多様な地域と時代の研究者を抱える大学の特性を生かし、世界各地の、現在の、そして過去の女性たちのいきざまを、等身大でとらえた研究教育活動を積み重ね、その過程で『地球のおんなたち』1・2や、『女性の性と生』などの成果を発表してきた。この女性研究者ネットワークの経験と資産をもとに、さらにその領域と活動を発展させて、男性研究者も参加して、2年前に発足したのが、大阪外国語大学グローバル・ダイアログ研究会なのである。この研究会は、単にさまざまな地域の研究を集積するだけでなく、それを一つの織物に織り上げていくこと、また、人間と社会を単なる研究対象としてではなく、対話の、ダイアログの相手としてとらえ、それを実践することを旨としている。
 まさに外大ならではの、言語を駆使した知の集積の所産だといえよう。
 大阪外国語大学グローバル・ダイアログ研究会が主催する第1回目の国際シンポジウムを、「痛み、怒り、癒し~暴力と女性の語り」と題したのは、このような外大における教員の研究会の歩みを背景に、納得していただけよう。
 さて、シンポジウムのもう一つの重要なテーマに、「暴力」がある。現在の世界には、冷戦の恐怖が過去のものとなった一方、具体的で生々しい暴力は、世界規模のものから学校や家庭のなかに至るまで、あらゆるレベルで見出すことができる。現代の世界は、この暴力に対して人間の、特に弱者の安全を、いかにして守るかという問題を非常に鋭く突きつけられている。このきわめて、クリティカルなテーマを、人文科学ならではの方法と視点で掘り下げることも、今回、我々が掲げる重要な目的の一つである。その視点とは、一言で言えば、国家や宗教などの大きな集団の言説ではなく、「個」の発する言葉、さらに言えば個と個の対話のなかでしか拾い出すことのできない、生きた言葉をつむぎだす作業ということに尽きる。まさに言語の壁を低くすることで可能になった、グローバル・ダイアログなのである。

目次

基調講演 女たちが暴力の記憶の淵から立ち上がるとき
1 チリ(背景説明 チリ―軍事政権期までの道のり;語りとレスポンス 暴力と貧困に立ち向かう―軍政下のスラムを生きた女たち)
音楽の交感 イスパノアメリカの音楽―支配と差別の彼方に咲いた混血の花
2 インドネシア(背景説明 インドネシア1965年事件;語り ゲルワニ活動家に対する軍の暴力に関する証言;レスポンス 淫らで残忍な女たち―インドネシア新秩序の反ゲルワニ・プロパガンダ;資料 女が政治囚になったとき)
3 南アフリカ共和国(背景説明 アパルトヘイトと日本―歴史認識の重要性;語り 過去からのスナップ写真―新しい未来を築くために、過去の痛みを認めること;レスポンス さまざまな暴力の存在に気づき、反対の声を上げること―私たちの世代の責任とは)

著者等紹介

武田佐知子[タケダサチコ]
大阪外国語大学教授。日本史。衣服やかぶりものを通じて国家、社会、身分・階級、国際的交通、ジェンダー等を考えている。また、女のライフヒストリーを描くことをテーマにしている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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niningasih

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p.81-153がインドネシアの9.30事件とスハルト、9.30事件以降にGerwaniメンバーの嫌疑をかけられた「政治犯」女性たちの証言。このテーマは精神的に落ち込むので苦手なのだが、必ず知っておかなければならない内容。2012/10/07

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