内容説明
アジアのナショナリズムは、植民地主義に終止府をうつうえで、大きな歴史的意義をになった。しかし、同時にそれは、「やつら」を排除して「われわれ」の国民国家をつくるという、国民国家の論理がはらむ問題をひきずらざるをえないものだった。孫文、ガンディー、ホー・チ・ミンという三人の人物をとおして、このアジアのナショナリズムの歴史的な意味を考える。
目次
孫文、ガンディー、ホー・チミン
西洋体験と思想的特徴
大衆運動
独立国家の栄光と限界
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
4
ガンディーの真の敵はイギリスではなく、近代工業文明そのものだったのだという。その点が、貧困問題の本格的除去という部分には至らなかった。「ガンディーおよび彼の支持者の運動は、不可触民そのものを主体とするよりは、不可触民にたいする差別の罪を悔いるカーストヒンドゥーを主体とするものだった。そして運動を、井戸や道路や寺院の不可触民への開放、人道的活動といった倫理的、宗教的な性格の強い一定の範囲の改良に限定し、貧困の除去といった経済問題への本格的取り組みや、カースト制度そのものへの攻撃は回避していた。」2022/10/30
星規夫
2
アジア植民地の西欧列強支配からの脱却・独立は、独立国内における少数派への支配・弾圧の種を孕んでいた……何とも皮肉な話であります。2014/01/28
日暮里の首領様
2
孫文、ガンジー、ホー・チ・ミン。20世紀アジアを代表するこの3人のナショナリストたちを通して、アジアナショナリズムを描く。20世紀アジアのネーションが、彼ら3人が西洋のそれを体験したことによってこそ「想像された」こと。彼らによるナショナルな大衆運動が、大衆の力を喚起しつつ、一方ではそれを制限するものであったこと。そして、植民地支配の矛盾を粉砕した栄光あるネーションが、片方では新たな矛盾を生み出したこと…。今なお左翼ナショナリズム的な視点からポジティブに描かれがちな「栄光の歴史」を、批判的に再検討する。2012/11/29
とも
2
アジアのナショナリズムの指導者たちが題材とされているが、著者がベトナムを専攻していることもあってホーチミンに関することは質が高い。だが、ガンディー、孫文に関してはさらっと書いており、アジアのナショナリズムと題する割にバランスがとれていなかったと感じた。 2012/10/31
ドウ
1
ホーチミン、孫文、ガンディーの3人のナショナリストの生涯と思想から、アジアのナショナリズムを論じるブックレット。孫文の思想が現在の中国共産党のナショナリズムと連続性があるのが面白かった。「アジア」という割には、地理学的区分でいう中央アジア・西アジアのナショナリズムに触れないのが不思議(ベトナム、中国、インドに比べるとどの国の誰を選ぶかが難しいというのがあるんでしょうけど)。2016/09/23