誰がドルンチナを連れ戻したか

誰がドルンチナを連れ戻したか

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  • サイズ B6判/ページ数 177p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784560043172
  • NDC分類 993.4
  • Cコード C0097

出版社内容情報

 時は中世、アルバニアのある村で、不可解な出来事が起こった。3年前に死んだはずの兄が、妹を遠い嫁ぎ先から連れ戻したというのだ。謎が謎を呼び、事件は次第に民衆の想像力のなかで伝説と化してゆく――。中世の感触が色濃い民間伝承をモチーフにして描く、ミステリアスな物語。

内容説明

時は中世、アルバニアのある村で、不可解な出来事が起こった。三年前に死んだはずの兄が、妹を遠い嫁ぎ先から連れ戻したというのだ。謎が謎を呼び、事件は次第に民衆の想像力のなかで伝説と化してゆく―。中世の感触が色濃い民間伝承をモチーフにして描く、ミステリアスな物語。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

miyu

44
遠方に嫁いだ妹ドルンチナを誓い(ベーサ)として連れ帰る兄コンスタンチンの物語は、アルバニアの古くからの言い伝えだそうだ。妹を家に送り届けたあと、コンスタンチンがひとり墓地に戻るところで伝説は終わるのだとか。そう聞くとなんとはなしにロマンチックだが、カダレは伝説の背後にあるだろう物語を本書で想像してみせた。ミステリーではないのでラストで種明かしがあるわけでもない。しかし警備隊長ストレスが大集会でふるう熱弁を、当時のアルバニアの孤立状態を知った上で読むと、カダレ自身の国を強く案じる気持ちを思い知ることになる。2015/07/09

長谷川透

33
死者に導かれドルンチナは遠い嫁ぎ先の土地から実家に舞い戻ってきた。兄と一緒に帰って来たと主張するが、彼は何年も前に死んでいた。不可解な謎を残してドルンチナは死に、謎を解く中で浮き彫りになるのは様々なものの対峙の中で深まっていく国家の混迷だ。死者と生者の対峙は相反する者同士の対峙に表面上は見えるが、いずれも生者から生まれた「物語」であり、生者の圧倒的な優位さ故、対峙を均衡させるために死者の物語が肥大化し、この国家を「死者の声」で覆ってしまったのだろう。一人の幽霊譚が終いには国家を包み込む亡霊譚になる。傑作。2014/03/06

ヘラジカ

31
以前から気になっていた作家。こちらが日本で初めて刊行された作品ということで手に取った。「事件です」との簡潔明快な台詞から物語は幕を開け、前半は戯曲のようなテンポの良さでミステリーが進行していく。しかし後半に差し掛かると、この事件が単なる怪奇的な出来事では済ませられない大事であることが判明する。真相と謎を追求していくうち、国家的・民族的な背景と共に事件の重大性が浮かび上がってくるのだ。後半の演説の言葉の重みは知識不足で完全に理解したとは言えないが、アルバニアという国に興味を持てたことだけは確かである。2016/10/05

em

19
アルバニアの伝説を基にした物語。死者である兄が結婚した妹を連れ戻す。あり得ない事件を追ううちに、兄の目指していたものが明らかに。昔からの掟(カヌン)とも違う、外から押し付ける制度とも違う、誓い(ベーサ)を規範とする世界。そして、ローマとビザンチンが等しい距離感で語られることが、この伝説を作った国を知る一つの鍵のように思えてきます。東西どちらも、内でもなく外でもない。「アルバニアの心」について駄弁を弄すことが「アルバニアして」いると言われる国。2017/06/29

gogo

17
死んだ兄が墓地から蘇り、遠くに嫁いだ妹を連れ戻す、という民間伝承に取材した小説。主人公の地方官吏は、死者の蘇りを信じる民衆の声が大きくなったため、キリスト以外の復活を教条的に認めない東方教会や首長から大きな圧力を受ける。しかし、彼は大主教も出た公聴会の場で、客観的事実に基づく結論を言明する。宗教と民間信仰のせめぎ合いからは、立てた誓いは必ず守るアルバニア人の矜持を読むこともできるし、刊行当時の国際情勢のなかのアルバニアの政治状況をも覗わせる。読者の想像力を大いにかき立て、様々な解釈の可能性を提示する佳作だ2015/03/15

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