ゼーバルト・コレクション
移民たち―四つの長い物語

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  • サイズ B6判/ページ数 268p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784560027295
  • NDC分類 943
  • Cコード C0097

出版社内容情報

異郷に暮らし、過去の記憶に苛まれる四人の男たち……医師、教師、大叔父、画家の生と死を辿る。蝶を追う「ナボコフ」に導かれ、哀切を込めて描く。
堀江敏幸・解説

内容説明

異郷に暮らし、過去の記憶に苛まれる四人の男たちの生と死。

著者等紹介

ゼーバルト,W.G.[ゼーバルト,W.G.][Sebald,Winfried Georg]
1944年、ドイツ・アルゴイ地方ヴェルタッハ生まれ。フライブルク大学、マンチェスター大学などでドイツ文学を修めた後、各地で教鞭をとった。やがてイギリスを定住の地とし、70年にイースト・アングリア大学の講師、88年にドイツ近現代文学の教授となった。散文作品『目眩まし』(90年)、『移民たち 四つの長い物語』(92年)、『土星の環』(95年)を発表し、ベルリン文学賞、ハイネ賞など数多くの賞に輝いた。遺作となった散文作品『アウステルリッツ』(01年)も、全米批評家協会賞、ブレーメン文学賞を受賞し、将来のノーベル文学賞候補と目された。2001年、住まいのあるイギリス・ノリッジで自動車事故に遭い、他界した

鈴木仁子[スズキヒトコ]
1956年生まれ。名古屋大学大学院博士課程前期中退。椙山女学園大学助教授。翻訳家。訳書に、ゼーバルト「アウステルリッツ」(レッシング翻訳賞受賞、白水社)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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(C17H26O4)

79
『アウステルリッツ』に続いてこの『移民たち』を読み、ゲルハルト・リヒター展で観た《ビルケナウ》を思い出した。陰鬱な印象の油彩の抽象画で、完成形からは見てとることはできないのだが、下層に強制収容所が写実的に描かれている。人々の記憶とドイツの歴史、リヒターの思いが塗り込められており、圧倒された。ゼーバルトの作品の下層部にも記憶と歴史が潜む。人々の忘れられたり封印されたりした記憶の更に何層も下にある悲しみ、苦しみ、怒り。語りのスキージで撫でられることで汲み上げられ、それらはようやく表面に顕になってくるのだ。2022/11/02

市太郎

64
ゼーバルトの散文作品。4つの長い「移民たち」の物語を写真を多用し、真実のように物語る。その静かで独特な語りに浸される。全体像が曖昧で、しかし包まれるような感覚のなかに時おり、胸を打つような文章に行き当たる。思い返してみるにこの物語は儚げで消え去っていく移民たちの廃墟的な文学であったと。歴史に残らない部分にこそ語るべき物語が眠っている。移民たちの切なさの声を聴く。2014/05/03

zirou1984

44
本当の悲しみはおしなべて言葉に表せないものだ。だからこそ、それは背景を丁寧に描くことによって輪郭を浮かび上がらせ、深い陰影によってその奥深さを指し示す。悲劇の時代を生き延び、その記憶に苛まれる4つの人生。か細き声は繊細な吐息と共に、声にならぬ声へと混ざり合う。モノクロの写真は匿名的でありながら、現実と虚構の狭間における語りの世界へと誘い込む。悲しみとはこんなにも豊潤なものなのかと感嘆を漏らさずにはいられない。それは喜びから見捨てられた生き方であろうとも、人生を豊かにすることは可能なのだと教えてくれている。2015/12/03

どんぐり

40
歴史の奥にしまい込まれた移民たち。流謫の民となって朽ち果てた姿が語られる。実話らしく見せる写真が何枚も載っている。「アンブロース・アーデルヴァルト」には、金閣寺の写真があり、「日本ではその独身の参事官が京都の近辺にすばらしく美しい水上の楼閣をもっていてね、アンブローズはなかばこの参事官の従者、なかば客人というかたちで、この水に浮んだひと気のない家で2年間暮らしたのだって」という記載がある。どこから実話で、どこまでが小説なのかが区別できない不思議な散文作品群。2013/12/13

りつこ

28
素晴らしい。どこまでも丁寧に詳細に綿密に語られ、ところどころに印象的な写真が挟まれているので、これはルポなのかしら?と思うのだが、しかしルポでもノンフィクションでもない。以前読んだ「アウステルリッツ」同様、これはひとつのジャンルなのだ。祖国を離れて移民として生きてきた人たち。目を背けていた残酷な出来事が国を離れた彼らを追いかけてきて追い詰めていくのが辛い。ドイツがしたことを忘れてはいけないという信念に圧倒されつつ、読み終わって浮かんでくるのが蝶男という面白さ。2013/06/20

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