内容説明
「知者は“心のある道”を選ぶ。どんな道にせよ、知者は心のある道を旅する。」アメリカ原住民と諸大陸の民衆たちの、呼応する知の明晰と感性の豊饒と出会うことを通して、「近代」のあとの世界と生き方を構想する翼としての、“比較社会学”のモチーフとコンセプトとを確立する。
目次
気流の鳴る音(「共同体」のかなたへ;カラスの予言―人間主義の彼岸;「世界を止める」―“明晰の罠”からの解放 ほか)
旅のノートから(骨とまぼろし(メキシコ)
ファベーラの薔薇(ブラジル)
時間のない大陸(インド))
交響するコミューン(彩色の精神と脱色の精神―近代合理主義の逆説;色即是空と空即是色―透徹の極の転回;生きることと所有すること―コミューン主義とはなにか ほか)
著者等紹介
真木悠介[マキユウスケ]
1937年東京生まれ
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
54
人間(ヒト)とは、一体、何なのか・・という根源的な問いかけをされた気分。ヤキ族の対話を入口として、自分自身の奥深くに分け入るような感覚を持ちながら、読み進めた。眼に見えるもの、頭で考えることを是として、そこに留まっていることを再考する。それは、ある意味、囚われていることでもある。言い古された言い方になるが、五感で感じ取ること、さらに、今を是としないこと。あるがままの状況を、まずは受入、そこから派生することへ、心を向けること。人と言う字の成り立ちを考える。2022/11/11
サゴウ
44
とにかくすごかった。真木悠介(見田宗介)の代表作とされるが、既存の世界の枠組みを溶かしてくれるような素敵な概念がたくさん詰まっている。ドン・ヘナロの老練な思想が美しい。「トナールとナワール」、「世界を止める」の2概念が特に良かった。現代人の多くに読んでもらいたい本。2023/09/10
fishdeleuze
22
「われわれの自我の深部の異世界を解き放つこと」。真木の若き日の仕事で、『気流の鳴る音』には、後の『時間の比較社会学』『自我の起原』へと繋がるモチーフが渾沌と投げ込まれている。カスタネダの四著作を自身の新たな思考のフレームワークの題材として用いたこの論文は、世界をどう捉えていくか、いかに枠組みを外し、相矛盾するようなメッセージを同時に受け取り、実践するための意識の変革をするか、感覚を研ぎ澄ますこと、根を持ちつつ翼を持つこと、→2016/02/23
原玉幸子
18
世界の「切り口」は、例えば、宗教・哲学・科学其々人によって違うストーリー仕立てで語られますが、時に理屈やひけらかしのインテリ、時に空想夢想の呪術的であり、西洋史観のインテリ世界観は、悪役レスラーの様に(何故かと言うか矢張り)批難されることが多いです。本書で真木が紹介している中米インディアンの世界も、差し詰め先期推奨した『絡まり合う生命』の様に「我々は全てで、全ては我々である」やもの反西洋史観的で、偏見ありのインド哲学の世界観と繋がっている気のする、読んで満足する小説風の「作品」でした。(◎2022年・夏)2022/07/22
りー
18
きっと一年前に読んでもまだわからなかったであろう哲学的な機敏…脱魔術化・脱呪術化する以前の世界観や存在論を面白く読む事ができた。「世界のあり方」について自分なりに考え、ある程度言語化した上で読むと良いかもしれない。カスタネダの入門書としても優秀(なぜなら僕が本書を読んですっかりカスタネダに興味を持ったから)。目的を持って読む読書というよりは、なんとなく手にとって読みたい本だな思う。きっと読むたびに受け取るものが異なるんじゃないだろうか。2020/06/27