内容説明
記憶、神話、歴史、そしてパサージュ。『パサージュ論』のみならずベンヤミンの全著作の底流にある「敷居経験」とは何か?敷居意識を先鋭化させることによって見えてくる神話的なものと、美、自由、歴史との関係は。
目次
7つの対照規定
神話の空間、敷居学
神話と言語(象徴、アレゴリー)
神話、美、芸術、批評
社会と芸術における神話と自由の双極性―悲劇、メルヒェン、ゲーテの『親和力』
神話的なものの時間形式、永劫回帰
神話概念の置き換えとその意味論の限界
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
内島菫
19
「通過儀礼(移行儀礼)とは民族学で、二つの状態、空間、時間の間の敷居が乗り越えられることを意味する。」そういう意味での敷居には、木村敏の「あいだ」や磯崎新の「間(ま)」という考えに通じるものを感じる。また、二つのものの間である敷居は、間接性、二義性、二重性の、居住空間や都市空間にも残る無意識の具象化のようにも見える。覚醒から夢への移行、神話から歴史への移行にも敷居という二義性を越える弁証法的行為をベンヤミンは見る。しかしまた彼は、神話の永劫回帰という最初の敷居超えの永遠の繰り返しの中に幸福を看取する。2015/11/05
ぷほは
2
『無限の二重化』や『吐き気』よりはだいぶお手軽な一冊だと言えるだろう。特に自分のような社会学畑の人間でもメディア研究や文化社会学で多用されるベンヤミンンの根底的なスタンス――敷居学――を類似の哲学的・文学的立場から丁寧に境界づけている点が好ましい。ベンヤミンが読みにくい理由の一つとして、彼が分析の俎上に載せる文学的・絵画的素材に対するこちらの圧倒的無教養ぶりがあるのだが、そういった微細な事象はpassageして、彼の根本的な歴史哲学への踏み出し(への希望)を垣間見せてもらえたような気がしている。2015/06/16
putisiyante
0
大学の論文形式でベンヤミンを論じている。難解だが、敷居学、敷居感覚、遊歩者など分かり易い。2011/02/14