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内容説明
本の虫で容貌のぱっとしないソーネチカは、1930年代にフランスから帰国した反体制的な芸術家ロベルトに見初められ、結婚する。当局の監視の下で流刑地を移動しながら、貧しくも幸せな生活を送る夫婦。一人娘が大きくなり、ヤーシャという美少女と友達になって家に連れてくる。やがて最愛の夫の秘密を知ったソーネチカは…。神の恩寵に包まれた女性の、静謐な一生。幸福な感動をのこす愛の物語。仏・メディシス賞(外国文学部門)受賞。伊・ジュゼッペ・アツェルビ賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
314
1992年の作品なので、まずは現代ロシア文学といっていいだろう。この年代なのでペレストロイカ以降のものである。したがって、かつてのソルジェーニツィンやパステルナークといった反ソヴィエト権力といった影はない。しかし、ここで描かれるソーネチカの一家がユダヤ系であることからも、小説の底流にはロシア社会に帰順しきれない、ある種のもどかしさのようなものはあるだろう。しかし、またその一方で、主人公ソーネチカの中に流れる時間はきわめてロシア的なそれでもある。夫のロベルトのそれは、より自由に芸術に飛翔するのにも関わらず。2014/05/21
KAZOO
185
ロシアの文学でしかもある女性の半生を描いている割にはページ数が少ないのですが、読後感はみっちりとした感じがします。さまざまな境遇の変化がありながら自分の好きな読書をしていく、というこの物語はかなりの人の共感を得ることができるのでしょう。私も比較的いい印象をもって再度読みたい気持ちになりました。2016/03/14
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
180
本が大好きなソネチカちゃんはちいさな頃から「本の虫」。戦争の時代、ソビエト時代と厳しく寒いつらい時代が続いても、豊かな世界文学が心を優しくあたため照らします。献身的に家事をして働いて誰も褒めてくれなくて一気に老け込んでも、親しい人たちの悲しい裏切りにあっても、「なんて幸せなんだろう(だったんだろう)」と自分の幸運を喜ぶソネチカちゃん。容貌はパッとしなくても、内側から光輝くソネチカちゃんが、とってもとっても大好きです。「幸せって与えられるものじゃない」しみじみ気づかせてくれる彼女はそう、天使だったのです。2019/02/24
遥かなる想い
176
ソビエト政権下での 女の一生を描いた作品である。本の世界で 生きてきた ヒロイン ソーネチカの佇まいが 静謐で 心地良い。 自分の事には 一切 構わず、 夫のために 娘のために 生きた魂は 無垢で 素敵である… 女性の生きる勁さを感じる…そんな印象が強い ロシアの女の一生だった。2019/07/15
紅はこべ
167
こんな人の好いヒロインは初めてだ。文学を愛し、その世界に浸ることを学んだから、ここまで全てを受け入れることができたんだろうか。ソ連時代の物語とは思えない程、静かな小説。ソーネチカは夫も娘も夫の愛人も愛したけれど、最も彼女を支え、必要としたのは本の世界なのかな。2016/12/03