さようなら、私の本よ!

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  • サイズ B6判/ページ数 467p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784062131124
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

ノーベル賞作家の、絶望から始まる希望。

国家の巨大暴力に対抗するため、個の単位の暴力装置を作る繁と、人類の崩れの「徴候」を書きとめる古義人――。「おかしな二人組」(スウォード・カップル)は静かに立ち向かう。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

343
1990年代以降の大江文学はこれまで読んでこなかったので、甚だ体系性を欠く感想なのだが。『恢復する家族』('95年)と『ゆるやかな絆』('96年)がエッセイの形で書かれていたので、このあたりで小説を書く気力と体力が弱りつつあるのかと思ったが、その後も『宙返り』以下何作も小説を書き続けている。本書は2005年の刊。大江70歳。エリオットの詩を基軸に書き進められる「偽自伝」だが、語り手は「私」ではなく長江古義人が措定されていること、またこれまでは全く顔を出したことがない椿繁が登場する。⇒2019/02/09

燃えつきた棒

36
先日観たNHK《100年インタビュー「作家・大江健三郎」》が、極めて興味深かった。 大江は、晩年、新しい創作法を模索していたというのだ。 その概要は、次のようなものだ。簡単なメモで恐縮だが。/ 若い頃は、ほとんど書き直さなかったが、次第に何度も書き直すようになった。 ◯エラボレイト:丹精する、精巧[念入り]に作る。 ◯新しい文体への道: 今まではイメージをたくさん書き込んでいたが、我ながら読みにくかった。 ◯レイターワーク: 晩年の五作※は、文章の呼吸ということに重点をおいて書いた。→ 2023/06/12

かふ

26
大江健三郎の「晩年の仕事」はサイードの本の示唆によって芸術家が晩年に自身の作品をリライト(書き直し)していくのをエリオットの詩「四つの四重奏曲」の詩のモチーフ、小題とエピグラフに老人の詩から、文学作品のリリーディングとして「ドン・キホーテ」「悪霊」ベケットから三島由紀夫の自決と別の可能性について、幅広くパロディとして論じていくのでわかりにくいところがある。それは『セブンティーン』で政治小説を書いてしまったことが作家の本意として受け取られてしまうのを自己批評しながらリライトしていくというような。2023/08/06

壱萬弐仟縁

23
ウラジーミル。 《人間は滅ぶものだ。そうかもしれない。 だが、抵抗しながら滅びようではないか。》 それもあなたの自由です (359頁)。 生き延びる方法が極めて限られている。 先ほどは、人材派遣でかつて パートしていたところに問い合わせたら、 法律が変わったので、 もう期待する仕事はない、 と、向こうの方が声が萎縮していた。 こちらの方が元気であったのはなんなのか。  2014/06/16

ソングライン

22
事故による頭蓋内血種の療養のために北軽井沢に移った作家古義人、そこに現れる同郷の高名な建築家シゲ。シゲの連れてきた若者たちはテロを企てようとする組織のメンバーでした。エリオットの詩が、セリーヌの「夜の果てへの旅」に登場するロバンソンが暗示する老人二人の暴走、そして事故による一人の若者の死。それでも、書き続ける作家という罪深き業を虚しく思う読書でした。2020/12/23

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