内容説明
国境なんて、いったいだれが考えたのか。世界諸国をひとりで旅し、各地で目にした不平等・不正義と、強烈に魅惑的な異質性。半ば強いられ、半ば楽しむ孤独と不便。現地の人々との思いがけない交情。そして日本人と日本学を顧みる。越境する社会学者の、異文化論日本考。
目次
1 異国暮らし(“What am I doing here?”―旅の途上;“Once we were British...”―インド人の誇り ほか)
2 メキシコ(百年の孤独;メキシコのカルチャー・ショック ほか)
3 ニューヨーク(ドアマンとタクシードライバー;カレッジ・ライフ ほか)
4 日本人と外国(戦後知識人の北米体験)
著者等紹介
上野千鶴子[ウエノチズコ]
1948年富山県生まれ。京都大学大学院社会学博士課程修了。東京大学大学院人文社会系研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
21
2003年初出。 先生は英語がヘタという(25頁)。 でも、社会学では一流。 社会科学は言語の勝負。 国境を超えない(36頁)。 町づくり事業でキイパーソンは まれびとで、土地のヨソモノか、 半ヨソモノ的な存在が触媒となって、 活性化が起きる(106頁)。 この認識は現在もそれほど 変わらないと思われる。 活性化というか再生に 変わっているのが違うのだが。 異文化体験や、 1980年代の円高になっていった 経緯の叙述もあり、 社会学の見地から 時代を描写されている。 2014/05/13
ukitama
1
著者の思考の裏側がうかがえて、興味の尽きない本でした。一方的に断定できない「あーでもない、こーでもない」が、特にメキシコ編には、比較的体系的に書かれています。多面的な価値観は、多面的な思考から、生まれるということでしょう。先進国と発展途上国に関する記述は、原語(英語)を通じて考えると、現実の問題として浮き上がる。これって、レヴィ・ストロールの考え方を思い起こさせるものでした。2023/10/15
あいくん
1
☆☆☆☆国語教科書に「情けは人のためならず」というエッセイが載っていますが、これは「国境お構いなし」の一部です。二度と会うこともないだろうに情けをかけてくれるゆきずりの人のことを上野さんは大切に感じています。上野千鶴子さんは海外体験が豊富です。メキシコやシカゴやニューヨークに滞在しています。車の免許を取り、予定を立てない車の旅でアメリカ大陸を縦断したり、横断したりというのは楽しそうです。その日の宿はその日にとびこむという旅です。旅の心得もこの本には書かれていますが、いろいろと深い洞察にうならされます。2013/08/31