岩波現代文庫
赤い高粱

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 328p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784006020798
  • NDC分類 923.7
  • Cコード C0197

出版社内容情報

婚礼の輿が一つ,赤に染まる高粱畑の道を往く.美しい纏足をもった少女.汗に濡れ輿を担ぐ逞しい青年.血と土,酒に彩られた一族の数奇な物語が始まる.その名「言う莫れ」を一躍世界に知らしめた,中国現代作家の代表作.

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

のっち♬

131
第二次大戦で抗日ゲリラに参加した父の視点と祖父母の辿ってきた歴史を交錯させる。冒頭から日本軍による虐殺が血生臭くて強烈だが、読み進めれば命の収奪は奔放な性生活や麻風病の差別などと共にむき出しの生の意志と赤裸々な本能を炙り出す触媒に過ぎないことがわかる。荒々しいプロットの「伝奇」ぶりや逞しくて魅力的な祖母の造形などには著者の育ちがよく現れており、「天と地と、人と高梁が一つに織りなされ」る祖母の死から自然と一体の生き方への憧憬が伝わってくる。生命の野生的で危うい美しさや輝きを飾らず描いたエネルギー溢れる一冊。2021/08/04

やいっち

77
(前略) 彼は、例えば、中国の纏足という風習を早くから指弾しているし、日本人の蛮行も描くが、本書ではそれ以上に、中国人の水滸伝風な英雄譚的側面も描いて痛快だったり、碌でもない中国の民をもえげつなく描き切る。  国の内外を問わず、描きべきものは描くのである。  文學手法において、フォークナーやマルケスらに影響されているというのも、人間の聖と俗の混濁した現実を描き切る格好の表現手法だったということなのだろう。 2013/09/04

NAO

76
この作品は、抗日戦争だけにスポットを当てているわけではなく、故郷の村人たちが語る、民間の伝奇、奇態とも思える一族の歴史こそが、話の主流なのだ。広々とした高粱畑、その畑を舞台に繰り広げられた、泥と血にまみれながらも奔放に繰り広げられた愛情の発露や、村人たちの自由な暮らし、生々しくも逞しい男や女たちの生の営み。特に、戴鳳蓮の生きざまには、「母性」への作者の強い憧憬が感じられる。自分の周囲を真っ赤な高粱と真っ赤な血で染めながらも生き抜いた戴鳳蓮のたくましさは、ガルシア=マルケスが描く女性たちとどこか似ている。 2018/12/20

にし

49
物語は血と土の赤い色。高粱酒の香りと対照的な生臭い匂いが読書中に漂い思わず咽びます。残酷さと背中合わせの美しさが中国文化なのでしょうか。「幻覚的なリアリズムに よって民話、歴史、現代を融合させた」としてノーベル文学賞を受賞された莫言さんの作品は文章が脈打っていました。2014/12/20

藤月はな(灯れ松明の火)

46
莫言作品はこの本が初めてでした。ガルシア・マルケス同様、グロテスクで暴力、殺戮などの禁忌に彩られているのに、それが鮮烈な清々しさと生きる強かさを際立たせるマジックリアリズム。中国のマジックリアリズムもラテンアメリカに負けず劣らずでした。読んでいると土、死者の腐敗とぶよぶよした感触、糞便、歳を取った親の饐えた汗、血と肉、白粉、酒などの匂いが強烈にページから湧き上がるような描写に圧倒されました。特に美貌と野心で周囲の状況を自分に有効に使いながら自分のろくでなしの実親と縁を切った祖母様が凄すぎる・・・!2015/03/06

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/387651
  • ご注意事項