出版社内容情報
情報の高度化によって社会が大きく変わろうとしている.すでに半世紀以前にこの事態を予見し,知のネットワークの構想を熱く語った思想家がいた.困難な時代状況のもと,つねに理想を高く掲げて未来へと発信しつづけた中井正一(一九〇〇―一九五二).「委員会の論理」「美学入門」を始め独創性と先駆性に満ちた十八篇を収録.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きいち
23
思わずあこがれてしまう圧倒的な教養の深さと幅の広さ。ハイデガーと孔子と江戸の儒学に文芸、映画に絵画にスポーツと同じ視線で語っていく、それが昭和初年から戦後すぐまでの文章なのだから驚く。こんな人がいたんだなあ。◇特高につかまってその暴力体験からも学ぶプレーンさ、漕艇の筋肉の動きを追う目。「美学入門」はそれらを活かしわかりやすい文章で展開。◇そして、国会図書館の初代副館長でもある。最後の図書館をめぐる何篇かの文章では、自らの思想を現実に移し図書館人たちを導くリーダーぶりがわかる。実践者でもあるって、最強やん。2014/09/10
壱萬弐仟縁
17
水の落下は自然の系列。この落下の秩序にあるのは、「自然系列的要素を人間的系列的秩序に結合することであり、それは自然的進行と技術的対象の新しい必然的な秩序の発生である」(50頁)。芸術はみずから人間的。人間的であることは、歴史的であることを意味する(159頁)。江戸の語彙の気が、空間的方向でなく、方向への鋭さとして、自らせめるべき否定の対象、契機となっていることは課題の一つ(205頁)。気の日本語はなかなか外国人にも説明しにくいと思われる。 2014/09/14
ちしゃねこ
2
高3の時、現代文の題材で読んで衝撃を受けたのを覚えている。あの頃の気持ちを今でも思い出せるよな気がしてくる。
Ex libris 毒餃子
0
アカい美学。しかし、戦前のマルキシストはいいなぁ。美学もいい。2010/11/09