出版社内容情報
英紙から“国宝級"とまで呼ばれるロックスター、
その素晴らしい矛盾をいま聴くこと──
人気コラムニストがディスクガイド形式で描く、かつてないザ・スミス/モリッシー論
ブレグジット後の「いま」だからこそ響く、もうひとつのUKポップ・カルチャーと地べたの社会学
文学少女からスケーターまで、左翼から右翼まで、じつに幅広い層から愛されてきたモリッシー。それは、モリッシーの音楽がまさにUKという国の矛盾をそのまま体現しているからにほかならない。
そんな彼の音楽が“いま”私たちのなかに喚起するものとは何か？
「これはアンオフィシャルなブレグジットのテーマだ」
「クソ左翼のバカな見解にすぎない」
このふたつのコメントは、この歌詞がいかに正反対の解釈で読まれることが可能かということを端的に示している。左と右、上と下、グローバリズムとナショナリズム。いろんな軸が交錯し、いったい誰がどっち側の人間なのやら、従来の政治理念の枠では語りづらくなってきた英国のカオスを、モリッシーは12年前にすでに予告していた。(本文より)
人気沸騰中のコラムニスト、ブレイディみかこ待望の書き下ろし新刊！
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケンイチミズバ
68
ザ・スミスファンのキャメロン首相が大学の授業料値上げを打ち出した時、スミスのギタリスト、ジョニー・マーは彼に向けて自分たちの曲の視聴を禁じるとツイートした。議会はスミスの楽曲をもじって議論が交わされた。なんて粋きな英国議会！スミスファンの私は1984年嘘八百を並べて就職活動し、社会に飛び出した。中身は青臭い学生のまま、社会にも企業にも政治にも反感を持ち歌詞に共感した。けれど好きなのはモリッシーよりねちっこいマーのギター。なんてかっこいい。私にとってはオアシス以上に解散は残念だった。とんがり方が違ってた。 2017/07/31
踊る猫
27
国宝級と称されたモリッシー。彼の世界についてブレイディみかこ氏はこの上なく平たい筆致でアプローチしてみせる。そこにあるのは、右翼とも左翼ともつかない（そんな単純なレッテル張りを拒否する）ヌエのようなひとりの男の姿である。モリッシーの自伝的な内容を期待すると肩透かしを食らうだろう。むしろザ・スミスからソロに至るまでアルバム毎に丁寧に作品世界が紐解かれて行く。従ってディスクガイドとして読むことが出来る。私自身はモリッシーのソロは全然聴いていなかったので、この本を読んで聴いてみようかという気にさせられた。秀逸だ2018/05/19
ばんだねいっぺい
24
「モリッシー」の生き方・表現を通じて、社会とは、国家とは、個人とはということが見えてくるよと教えてくれる一冊。評伝としても、音楽史的な考察としても、社会評論としても読めるすばらしい本だ。金子文子さんのことが気になった。あとがきの差し込みが深く余韻をもたらす。2022/05/30
zirou1984
24
繊細で中性的で知的なオスカー・ワイルドと、暴力的で野蛮で瞬発的なフットボール・フーリガンが同居した世界―これは著者のブレイディみかこ氏がモリッシーを例えた言葉だけど、つまりはそういうことなんだろう。あらゆる二項対立をすり抜けて、地べたでものを語ろうとすること。政治的でありながらもユーモアは絶えず忘れることなく、それでいて胸をかきむしりたくなる言葉を届けるということ。これは英国を代表する類まれなるリリシスト・モリッシーにも、現代において最も信頼できる書き手である著者の両方にもあてはまるのだ。2017/11/12
しゅん
22
モリッシーがチャーミングすぎて爆笑しながら感動した。ザ・スミスファンの自分にとって、ブレイディみかこという鋭い批評精神とたくましい精神性を持つ書き手が全アルバムのディスクレビューを書いているというだけで嬉しくなってくるのだが、内容が想像以上に素晴らしかった。複雑な陰影と極端な二面性を持つ歌い手＆作詞家のキャリアを英国の社会史と重ねることで、灰色の世界に鮮やかな色彩を与えている。この本のなにが感動的かって、モリッシーが音楽を通してやろうとしたことと同じことを言葉で達成しているところなんだよなぁ。2017/07/04
