感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Miyoshi Hirotaka
16
わが国では児童文学に分類されているが、『ガリバー旅行記』や『イワンの馬鹿』は権力批判の作品。『仮名手本忠臣蔵』にも「咎なくて死す」というメッセージが埋め込まれている。このように、命がけで真実を伝えようとした名作の一つに数えられる作品。現代の目線で読むとファンタジーだが、作品が書かれた1930年代には大飢饉、強制労働、粛清により国のかたちが力で変えられた。作者の生前には出版が叶わず、完全版が出たのはペレストロイカ後。よそ様の国のことだが、一度表現の自由が歪がむとその復活には数十年を要する。他山の石としたい。2020/10/11
ソングライン
14
モスクワの街角で神の存在について話し込む文芸誌の編集者と詩人の前に突然現れた黒魔術研究家を名乗る謎の男、彼は編集者の無残な死を予言し、イエスの最後を観てきたかのように語り始めます。編集者は予言の通り死に、狂った詩人は精神病院へ入れられ、一方謎の男は猫男、赤毛の小人を連れ、モスクワの街で黒魔術を公開します。詩人が精神病院で出会う巨匠を名乗る作家、混乱の物語は何処へ向かうのか、下巻へすすみます。2023/05/24
ぐるぐる244
8
我に従え、読者よ!で終わってびっくりした。2019/11/17
ヤクーツクのハチコ
3
スラヴ入門の本でスラヴ諸語に訳されている本として紹介されていたので読んでみた(もちろん日本語で)。旧社会主義圏では「あるある」な感じでウケたんだろうな。登場人物が次々不条理(ギャグだが)に見舞われキ○ガイになり、キチ○イ病院に収容され、注射を打たれて大人しくなり(数年前もプーチンがやってたな)その他よくわからんことで連行されたり。別の東ドイツギャグ本でマルクスを「共産主義という悪夢をプレゼントしてくれた赤いサンタさん」という記載があったが、悪夢を有無をいわさずプレゼントされた人たちの心情がよくわかる・・2015/06/20
惨児春
2
当局ににらまれた作者が終生発表できなかった作品。何でも一度原稿を燃やすまでしたとか。そんな作品の主役が作品を発表できず発狂した『巨匠』なのだから、これはもう思うところがないわけがないだろう。作者は過去に故郷のキエフに対する讃歌とも言うべき白衛軍を書いているが、どうやらモスクワには恨みがあるらしい。作中でモスクワで名を上げたという設定の人物を片っ端から精神病院に送り、斬首し、一方でキエフから来た男を追い返している。色々と切実な創作だと思うが、楽しい作品に仕上がっている。モスクワ上空を飛び回るシーンが好きだ。2015/07/19