内容説明
コンピュータゲームの世界と一体化した中央官庁に働く職員、自我の目覚めを経験して苦悩する倉庫、夢の中で生活する学生、死の意味をめぐって怪談を続ける子供たち…。この時代に存在するものすべてを哲学的幻想で包み込み、意識のまどろみの中で変身話から東洋の宗教思想まで味わいつくす作品をつぎつぎと生み出すロシア新世代の作家ヴィクトル・ペレーヴィン。20世紀の終りに現われた異才の浮遊する世界。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
63
様々な国の文学が入り交じったような短編集。倉庫XⅡ番という無機物による思想を取りながらとても臭い樽への嫌悪とそれによって自己を認識する話は『吾輩は猫である』とカフカ作品がミックスされたみたい。アウトサイダーの弥次喜多道中を描いたような『世捨て男と六本指』は『ゴドーを待ちながら』と『さよなら、人類』ぽい。『ゴスプランの王子様』はゲームが仕事になった世界で仮想現実での出来事が現実を侵食する様子はギリシャ神話での予言や噂は出された時点で現実となる法則と似ているのが興味深いです。表題作と「青い火影」の幻想味は好み2016/09/17
さっとる◎
43
ローディング……ゴスプランより…「生きてるかい?」…即答できないならこう言い換えてもいい。死んでいる?起きてる?それとも夢見ているかい?宇宙が入った湯飲みを扱っていた市場はどこでしたっけ。倉庫Ⅻ番とか人間狼とか六本指が一体何かって?そういうことを問う前にまずは人間が何かって、そこじゃないのかな。押しつけられた扉が開いて出たここはどこだい?みんなほんとは眠ってるって、これは秘密なの。あんなに大きなソ連って国があったとかね、それはどこの誰にとって本当なのかな。起きなくていい、眠ればいい、そして夢を見たらいい。2019/01/05
きゅー
13
ペレーヴィンの作品はどれも哲学的で宗教的かつエンターテインメント。そのバランスが彼の凄いところだ。特に良かったのは以下の作品。「倉庫ⅩⅡ番の冒険と生涯」何の変哲もない倉庫の生涯がユーモラスに語られる。「世捨て男と六本指」二人の人間の哲学的対話が進むが、彼らはそもそも人間ではないような。「ゴスプランの王子さま」普通のサラリーマンの生活に、ゲーム「プリンス・オブ・ペルシャ」の生活がオーバーラップする。一筋縄ではいかない迂遠な議論が続くと思いきや、おかしな思いつきで読者を笑わせたりと彼の本領が発揮されている。2012/12/04
バナナフィッシュ。
7
青い火影が面白い。語子供達の発想力も面白いけど、そこをあえて外すような場面設定がなんとも可愛い。作者は本気なんだか、脱力系なのか、そこのところも曖昧で掴み所がなく不思議。つまりもう少しこの作家とは付き合っていきたいということです。2019/03/17
kozy758
7
なじみがないSF小説たちである。サクサクとは読めない。だが、脳をぐいぐいと押す貴重な作品たちに出会えてよかった。2014/09/07