内容説明
雨の専制帝国。腐りはてた大人たち。子供の反乱。ファンタジー小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スターライト
1
主人公は、ストルガツキイ自身を投影したと勘繰りたくなる流行作家ヴィクトル・バネフ。妻との仲は冷え切っており、サナトリウムで起居し、アルコールをこよなく愛す。地元には癩病患者を収容した病院があり、彼らは顔に包帯を巻きつけ、<濡れ男>と呼ばれていた。ある日突然、町中の子供たちが行方不明になる事件が起こり、癩病患者のいる病院に集まったことがわかる。しかし有刺鉄線と武装した人間に阻まれ、親が子供と面会できる時間が厳しく制限され、大人たちは途方にくれてしまう。全体的には暗いムードが漂うが、結末が明るいのは救われる。2010/03/14
刳森伸一
0
神童たちと癩病院に収容されている濡れ男による反乱が背後に忍び寄る中で酒を飲み、建設的とは言い難い議論や無駄話、そしてセックスなどにあけくれる大人たち。SFとしての派手さはないけど、不思議と引き込まれる作品。2014/03/08
kkanamura
0
ソ連のSF作家ストルガツキー兄弟の作品.価値観の古い「おじさん」を笑う現代の「若者」を彷彿とさせる「濡れ男」に感化された子供たちは,世代間の確執は普遍的なものなのだと思わせる.本来副題であった「みにくい白鳥」は本編中の医師ゴーレムのセリフ「美しいアヒル」と対応しており例の童話を素にした良い比喩となっている.SF色の強かった同作者の「ストーカー」と異なりSFにカテゴライズされるかは微妙な作品である.ラストはかなり判断が難しい.ある種の爽快感はあるものの解釈に関しては読者に委ねられている.2020/07/26