内容説明
孤立を求めて連帯を怖れず。権力なき共生はいかに可能か。マルセル・モースに端を発し、ポランニーを経由して、柄谷行人の交換様式論にいたる流れを追い、マルクス、ワルラスらの理論的探求、グレーバー、スコットらの実践的展望を援用しつつ、贈与のモラルを内包した交換様式の実現に来たるべき社会の構成原理を見出す、渾身の書下し。
目次
マルセル・モースとは誰か
贈与のモラル
国家と個人
無力な首長と国家なき社会
「ハウ」と戦争
利潤なき市場経済
労働力商品と剰余価値
贈与と負債
理論と倫理
モースと社会主義―生産様式から交換様式へ
交換様式D
ネーション
可能なるアナキズム
著者等紹介
山田広昭[ヤマダヒロアキ]
1956年、大阪府生れ。京都大学大学院文学研究科博士課程中退。パリ第8大学第三期博士(フランス文学および比較文学)。現在、東京大学大学院総合文化研究科教授(言語情報科学専攻)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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月をみるもの
12
柄谷の「可能なるコミュニズム」を想起させるタイトル。以下の文章をハガレンのアル・エド兄弟に捧げたい。"等価とは、交換される物同士の価値があらかじめ等しいとされているということではない。交換によって作り出されるつながりが自由に取り消し可能であるとき、そしてそのときにのみ交換された二つの物は等価だというべきなのである。さらに、等価交換は、その成立に当事者相互の自由な合意を必要としており、しかも、こうした自由な合意にもとづく交換は、共同体のくびきや上下関係から解放された対等な人間のあいだにおいてのみ可能である"2021/08/23
mstr_kk
7
とても読みやすく、面白くはあるんですが、何のための本なのかはわかりにくいですね。「可能なるアナキズム」というタイトルが非常によくないと思います。このタイトルだと、「どうすればアナキズムが可能になるか」という実践の書だと思われるに決まってるじゃないですか。でも、実践的なところはほぼゼロで、古きよき感じの思想紹介の本です。そして、思想紹介としてもちょっとありきたりでぬるいかなと思いました。2021/02/20
冬佳彰
7
なかなか歯ごたえのある本だった。「分からなくても、ページ数を決めて日々読み進める」ルールで(あくまで)読了はした。「可能なるアナキズム」というか、「アナキズムはどのようにして可能か?」をマルセル・モースをベースに考えるといった流れ。しかしまあ色んなところに話が展開し、論旨を追うだけでも一苦労であった。で、結局、アナキズムは可能なのか?ということ、これはその時の諸々の外的・内的要因の上に危ういバランスを取るようにして成立するかも?が結論だったのかもなあ。(続く)2020/12/10
Ñori
2
マルクス主義に欠落していた日常実践としての贈与をモースを起点に、ポランニー、柄谷、グレーバーやスコットを経由して、アナキズムという視座から読み解く。岩野がフランス現代思想から贈与を読み解いた作業を人類学と経済学を中心に行なった、2冊を読むと贈与という議論・問題というものの奥深さが補完的に理解できる内容になっている。しかし、やはりグローバル・サウスの実践に身を置かなければ見えない議論が日本の論者たちには盲点となっている印象。そこは自分が頑張らねばと思う次第です。2021/05/18
モート
1
アナーキズムの歴史ををじっくり見つつ、それを基に未来を築くための参考書。様々な角度から周辺を含めて記録してある。。。 現在から未来は変数が大きい。トラストレス構造技術のブロックチェーンやDAO、AI が実用実験しつつ激しい成長を見せている。。。 前者は信用の概念をおおきく変えていき、AIはホワイトカラーの役割をこなす。更にシンギュラリティの場合、極端な変化が起こるだろうが、変化に抵抗するのが人間の性質だから時々で規制が入るが、国家間の競争もあり、他が捨てれば他は利用する確率が高い。 2023/12/31