内容説明
「海岸より望見すれば、残存する家屋なし」壊滅した都市と人々の混乱を史料と遭難記・回想を手がかりに描き出す。今、大地震が起こったら…。
目次
第1章 関東大震災と横浜
第2章 横浜港・関内と山手の罹災
第3章 野毛、戸部から神奈川、鶴見の罹災
第4章 関外とその周辺の罹災
第5章 神奈川県庁・横浜市役所の罹災と陸海軍小部隊の来着
第6章 横浜の流言と虐殺
第7章 海からの救援と戒厳警備隊の到着
第8章 震災復興とその後
著者等紹介
今井清一[イマイセイイチ]
1924年群馬県生まれ。横浜市立大学名誉教授。専攻は日本近代政治史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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なおこっか
5
地震から火災発生までやや間があった東京と異なり、震源地に近い横浜は地震と火災はほぼ同時に来た。官公庁も火災により機能喪失、翌日以降の応援物資も配給できない有様。住民が主体的に居場所や食糧を確保するも、その行為は掠奪と表裏一体であることも。ロシアからの支援は共産主義への怯えから断るあたり、今のリビアでも起きているような。東京と横浜が行き来できるより前、1日夜には朝鮮人についてのデマが流れたので、地域を越えた流布ではなく、各地発生したのだろう、と著者。朝鮮人に対し後ろ暗い思いがあるからだ、と吉野作造。2023/09/11
紫草
4
関東大震災についての本はかなり昔に何冊か読んでいるはずなのですが、それらはほとんど東京について記述のみだったと思います。むしろ横浜の方が被害が大きかったのだとは知りませんでした。というか、横浜も東京も同じようなものだと思っていたので、違いがあるかもなんて気にしてもいませんでした。朝鮮人虐殺についても、いつ、どこで、なぜ、そのような流言が発生し広まっていったか細かく検証しています。何しろすべて焼けてしまい、役所は全く機能せず、なので、確かなことはわからないのですが。2017/02/01
ホンドテン
1
図書館で。とかく東京の被害に記述が集中しがちであり、震源に近い横浜の状況は断片的なものが多いが、その空白に答えたのがこれである。著者は原因は横浜周辺の被害の甚大さゆえに報告、記録さえままならなかったからであると指摘する。記述される被災状況(市街地の90%焼失)はそれを裏書きするに充分。特に吉村本でも指摘される流言飛語の発源とされる山口正憲らの略奪については裁判記録まで引用しており、収穫だった。2014/11/30