出版社内容情報
小説『荒地の恋』(ねじめ正一著)のモデルとなった、詩人北村太郎の知られざる日々の佇まい。
詩人北村太郎は港の人が敬愛する詩人のひとりで、エッセイ集『樹上の猫』『光が射してくる』を刊行している。その北村太郎と鎌倉の同じ家に暮らしたこともある不思議な縁で、著者は親しく交わる。日々の飾らない優しい詩人の姿や暮らしぶりを淡く、ぬくもりのある筆致で描いた好エッセイ集。画家山本直彰によるエッセイ「北村太郎の白」を収録。
著者紹介/橋口幸子(はしぐち・ゆきこ)
鹿児島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務し校正を担当した。その後独立してフリーの校正者として長年活躍する。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
35
詩に疎く、北村太郎さんを知らなかったのだけれど、冒頭「天気図」という詩で初めて知った。白いネギの部分がとても印象的な詩。著者橋田さんが身近で見て来た詩人の生活とその心。うろうろしながら野良猫の友達を作り、いきつけの喫茶店で珈琲を飲みながらエクレアを食べるおだやかな詩人の姿が目に浮かぶようだった。2015/12/22
ばう
35
★★★★お気に入りの書店さん繋がりで知った本。本を閉じて最初に思った事は「この本に出会えて良かった」。心がじんわり暖かくなるエッセイでした。詩人北村太郎と、たまたま同じ家で暮らした経験を持つ著者との交流が描かれていますが、全編を通して暖かい雰囲気が流れていてとても良かったです。北村太郎さんのあたたかい人柄がよく伝わってきます。鎌倉、最近は初詣でしか行ってないなぁ。イワタコーヒーはホットケーキが有名だけれど今度行く機会があったら私も北村さんの真似をしてエクレアを頼んでみよう。2015/06/15
ユーカ
26
僕は北村さんと似ているところがあって、外側と違って内側は真っ赤に熱された鉄のようだ。北村さんにお会いできることがあったら、何と言ってくださっただろうか。「僕はこの仕事が死ぬほど好きなんです」。何と言ってくださっただろうか。雨の日。ワンフレーズにかける詩人と作家、ライターに。それを精緻な目で見る校正者に。一枚の写真にかける写真家に。1ページにかける編集者とデザイナーに。自分の感覚を信じてインクを調合する印刷屋に。本を愛し、読むすべてのひとに。そして愛するひとがいるすべてのひとに。すべての飲んだくれに。2015/07/08
sasa-kuma
16
鎌倉で北村太郎氏と同じ家で暮らした縁を持つ著者の視線で描かれたエッセイ。読み物としてではなく、正直に見つめた北村氏を表現している。やさしさもあるが、どこか寂しさを感じる人柄が浮かび上がる。「荒地の恋」という北村氏をモデルにした小説もあるみたいなので読んでみたい。エクレアが好きな北村氏。私もシュークリームよりエクレアが好き。ほっそりとした姿と、シューとクリームの量のバランスと、上にかけられたチョコ(モカ味が好きだけど)。余談でした。2016/01/06
チェアー
11
再読と思っていたら、初見だったか。北村太郎さんの温厚な人柄が飾りのない文章で記されている。感じるのは寂しさ。しかしそれを自分で選んだのだという挟持。若者と猫が好きな詩人は、喫茶店でぼんやり過ごし、静かに死んだ。2018/08/23