内容説明
英雄は去り行く。劉備の遺志を受け継いだ諸葛亮は、疲弊した蜀の国力を一年で回復させた。蜀に残された道を進むべく、孔明は、自ら豪族たちの蔓延る南中の平定を目指す。一方、大軍を率いて呉に大敗した魏帝曹丕は、周囲の反対を押し切り、再び広陵への親征を強行する。だが、度重なる敗戦は彼の身体をも蝕んでいく。魏の侵攻を悉く退け、さらなる飛躍の機を伺う陸遜。孔明の乾坤一擲の北伐策に、その武勇を賭ける趙雲。遺された志に光は射すのか。北方「三国志」慟哭の第十二巻。
著者等紹介
北方謙三[キタカタケンゾウ]
1947年佐賀県唐津市生まれ。中央大学法学部法律学科卒。81年『弔鐘はるかなり』でデビュー。83年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞、85年『渇きの街』で第38回日本推理作家協会賞長篇部門、91年『破軍の星』で柴田練三郎賞をそれぞれ受賞
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感想・レビュー
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W-G
370
ここまでくると、ドエム司馬懿が主役級。呉の陸遜も、安定感のある良い武将になっている。しかし哀しいかな、この二名に関しては尻切れ蜻蛉で終わりそう。ここに来て、姜維も登場し、いい味出しているが、これまた見せ場は少ないだろう。国力回復に四苦八苦しながら、肝心の戦でそれが報われない孔明の悲哀と、曹丕が逝き、先の崩壊に向けて、不穏な空気を強める魏が主に描かれるなか、爰京と馬超が出会う。この二人が、時代の見届け人みたいな立ち位置に収まるのか。そして最後に趙雲が屈指の漢っぷりで逝く。期待に応える見事な描き方。2018/12/23
ehirano1
99
故事成語でもあり且つ三国志における屈指の名場面、「泣いて馬謖を斬る」。結局一番辛い思いをしたのは死んだ馬謖ではなく残された孔明なのではないでしょうか。「馬謖暴走による北進撤退」、「馬謖についての趙雲との会話」、「牢獄での馬謖との会話」においてそれが滲み出るような描写が印象的でした。2017/06/11
はっせー
98
これで残りあと1巻になってしまった。終わりが近づくことは悲しい気持ちが強い。結末を知っていてもやはり悲しい。それはこの北方謙三さんの三国志の世界にどっぷり浸かることができているからだと思う。趙雲の死。彼らしい気配りだろう。自分がいない蜀で誰を立たせたらいいか。どう育てたらいいか。そんな指針とも言える羅針盤を置き土産に残してくれた。そろそろ乱世を終盤。三国が建ちお互いに削り合っていく。民もそろそろ厳しくなってくる。次の1巻でどのような終わり方を北方謙三さんが見せてくれるのか楽しみである!!2022/11/05
ehirano1
78
孔明「暖を取って戦はやらぬぞ、馬謖。寒い時は寒い中で、暑い時は暑い中で、考えるのが戦場だ。でなければ何かを見落とす。何かを忘れる」、馬謖「またひとつ、学びました」、当方「馬謖に同じにございます。ありがとうございます」。2022/01/15
mayu
78
泣いて馬謖を切る。馬謖は功を急いで命令に反したんだと思っていたけど、経験がない中で圧倒的多数の敵を前にしたら、相当な胆力がないと冷静じゃいられない、たしかにそうだ。良かれと思って選んだ行動が全てを台無しにしたとわかった馬謖も、自分が見誤った、自分の責だと考える孔明も、どっちも苦しい。そして、遂に初期からの英傑で唯一残っていた趙雲も退場。共に生きてきた仲間を次々と亡くし、その志を託された孔明、これからは新世代を率いた孤独な戦いになる。馬超は新たな幸せを見つけたようで、この場面は和みだった。2021/06/12