内容説明
「我は何物をも喪失せず/また一切を失い尽せり」。孤独を求めて都市の群集の中をうろつき、妻と別れて呆然たる思いで郷里の川辺に立ち尽くす。生活者としては孤独な生涯を送ったが、人間の感情や想念のすみずみにまで届く口語や、絶望や望郷を鮮やかに歌い上げた文語により、日本語の詩を最も深く広く探った詩人。多くの人に親しまれ、詩の歴史に最大の影響を与えた詩人の全貌を提示して、官能と哀感、憤怒と孤独の調べが、時代を超えて立ち上がる。
目次
地面の底の病気の顔
竹
すえたる菊
亀
笛
天上縊死
感傷の手
殺人事件
雲雀料理
掌上の種〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みやび
12
きちんと読んだのは初めて。もっと情緒的な詩が多いのかと思っていたけれど、どこかミステリーを思わせる展開の詩があったり、現実的な絶望や孤独が描かれていたりと、一編ごとに表情が違っていたのが印象的で、今までのイメージが大きく変わった。その中でも美しい情景が目に浮かぶ「思想は一つの意匠であるか」や「青猫」「春の実体」、ドキッとさせられる「天井縊死」「殺人事件」などが好きになった。もっと深く味わってみたい詩集です。2018/11/22
∃.狂茶党
10
挿絵、良い絵なのですが、裏写りが厳しい。 編集ではなく、出版事情なのかもしれないが、もうちょっと配慮して欲しい。 『月に吠える』が別格。 ただこのような病んだものは、続けられないだろうし、続けたくもないだろう。 苛立ちが次第に嫌な人になっていくようです。 『青猫』よりも『宿命』が良い。 タイトルが大袈裟なのは、精神状態が良くないのだろう。 そんな時の詩がイキイキしてるように思える。2022/11/29
HaruNuevo
9
耽美的で謎めいていてそこかしこにのぞくエロチシズム。 あたこちの詩で、「すえたる菊」という表現があり、その他にも枯死、腐敗をイメージさせる表現があったが、死のイメージを重ねていたのだろうか? 気に入った詩は 『その手は菓子である』 『夢に見る空屋の庭の秘密』 『遊泳』 『女よ』 『月光と海月』 『乃木坂倶楽部』 『珈琲店 酔月』 死をどこかに感じながら、自分を孤独たらしめた自分自身を嘆きつつ、それでも湧く性欲を詩に昇華させた、そんな印象だ。、2023/07/28
ろびん
6
毎月のように違う版で萩原朔太郎を読んでますが、やはり良いなあ……。2018/04/02
瀬尾
6
まず、音がイイ。抒情的で、深みがあり寄せては返す波のような心地よさを感じる。そして、抽象的でいて物語のような世界観は、なんど読んでも飽きない。噛めば噛むほど味が出て、くせになる一品。2012/10/08