内容説明
東京からカラフトへ向かう「紅緑丸」の船上で発見された変死体(「人喰い船」)、山中を走るバスから消えた五人の乗客の謎(「人喰いバス」)、谷底から消えた墜落死体(「人喰い谷」)、密室から消えた凶器の謎(「人喰い倉」)―。昭和初期を舞台に、放浪する若者二人―呪師霊太郎と椹秀助が遭遇した六つの不可思議な殺人事件を描く、奇才による本格推理の傑作。
目次
人喰い船
人喰いバス
人喰い谷
人喰い倉
人喰い雪まつり
人喰い博覧会
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
90
作者ミステリデビュー作品〔再読〕。探偵役の呪師霊太郎と椹秀助、2人の出会った6つの不可思議な事件を描く連作短編集。満州事変から数年後、大戦へと向かう混沌とした時代という怪物に、喰われていく様な不安定な心理描写が特徴的だ。1話毎はシンプルなミステリで、消失や密室、不可能犯罪など、古典的だが作者ならではの本格を感じられる。伏線を巧みに張り、謎解きそのものも幅広く推理できる、何とも良い風味の作品だと思う。最終話で今迄の風景がガラリと変わる、言わば現代風などんでん返しを用意したと言う所だろうが、ピンとこなかった。2020/03/11
スカラベ
63
若い頃は「神狩り」など、筆者のSFに傾倒していた。久しぶりに手に取ったのは本格推理物。このジャンルを読むのは初めて。最初の短編5本で事件と謎解きが披露され、最後の中編「人喰い博覧会」で意外な結末を迎える。短編はそこそこ楽しめるが、そんなにキレは感じられなかった。帯にもあった最後に暴かれる「大仕掛け」についても、ちょっと肩透かしを食らった感じ。ミステリーの要素よりも、戦前の昭和初期における特高警察やそれに対抗する主義者、人を食い物にする資本家の権力といった構図から浮かび上がる時代の不気味さの方が印象に残る。2017/06/14
とち
57
書店のPOPに惹かれて購入。短編5編と中編1編。人間心理に興味を持つあまり、殺人事件にまで首を突っ込んでしまう呪師霊太郎と椹秀助の探偵物語。最後の『人喰い博覧会』はのっけから「ん?」と違和感がするのですが・・・・・・なるほど、面白い仕掛けですね。冒頭にしっかり伏線を張っているのも流石です。当時の時代背景なんかに詳しいとより楽しめるかもしれません。2015/06/13
HANA
55
時は昭和初期、場所は盛りを過ぎつつある北海道O‐市を舞台とした連作。時代と場所からか、全体的にセピア色で覆われたような印象を受けた。途中までは割とあっさりした感じで、自分も幾つかの話は真相を読み解けたほど。この時代ならではの動機とか絡めている部分は流石だなあ。ただ最終章を読んでいるうちにいくつかの箇所で首を傾げる部分があり、その違和感が膨れ上がったところで風船を弾くような大仕掛け。詳しくは書けないが、何故あの時代を舞台にしたのか、と何故最終章以外の諸編が書かれたのか。過ぎし時代への鎮魂の書だなあ。2014/04/04
hnzwd
42
盧溝橋事件あたりの時代を舞台とした一連の短編集。最後の一編でそれらの短編をも伏線にするという、ミステリ短編集として、期待を裏切らない一作。帯と書店のポップで物凄い煽られてたので、インパクトが弱められた感も。。。もったいないことをした。2014/01/24