出版社内容情報
強者「西欧」による世界観からの自由を目指す本
考古学・言語学・文献・神話すべてを総合した緻密な考証から、人種差別の産物「古代ギリシアのアーリア起源」を否定し、「フェニキア・エジプト起源」を立証、欧米界に一大センセーションを巻き起こした野心作。
内容説明
西洋中心主義でもなくアフリカ中心主義でもない新説を提唱。
目次
第7章 テラ島の噴火―エーゲ海地域から中国まで
第8章 ヒクソス
第9章 紀元前一八世紀と一七世紀のクレタ島、テラ島およびミュケナイ文化の誕生―ヒクソスの侵略はあったか
第10章 エジプト、メソポタミアおよびレヴァントとエーゲ海地域との接触―文書にみる証拠
第11章 エーゲ海地域とエジプトおよびレヴァントとの接触―考古学にみる証拠(紀元前一五五〇年‐一二五〇年)
第12章 英雄時代の英雄的終焉―テーバイ、トロイア、ミュケナイの没落(紀元前一二五〇‐一一五〇年)
著者等紹介
バナール,マーティン[バナール,マーティン][Bernal,Martin]
1937年ロンドン生まれ。コーネル大学名誉教授。ケンブリッジ大学キンクズ・カレッジ卒業。コーネル大学政治学部正教授を2001年に退職
金井和子[カナイカズコ]
1945年愛知県生まれ。1977年、東京教育大学大学院文学研究科博士課程修了。同志社大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takao
2
ギリシア文明はエジプトやレヴァントの影響を受けていることを、言語学的あるいは考古学上の情報を踏まえて提示している。本書は、黒いアテナⅠに続くものだが、Ⅰの要約が最初に書かれている。 しかし、そうなると、なぜ、エジプトが先行文明たりえたのかが、逆に不思議になっていくる。2018/05/07
印度 洋一郎
2
下巻は、色々な状況証拠から、クレタ島がエジプトの植民地乃至属国のようなものだった、という話へ。そして、クレタ文明もギリシャ本土のミュケナイ文明も又、セム語を話す人々(恐らくはエジプト人)が多数住んでおり、支配層を形成していたであろう、という推論へといく。つまり、ヨーロッパ文明の発祥であった古代ギリシャは、エジプトや中東の文明の影響力の元に生まれ、それを継承、発展させていった延長線上に存在する、という結論に至る。この内容のために、アメリカ辺りでは大分非難されたようだが、私は別に違和感が無い。他人事だからかな2013/08/13
めぐみこ
1
本書で著者が提起するのは、古代モデルの改訂。言語からしてギリシアは北方から侵略・侵入を受けたに違いない、ギリシアに植民地化が到来したのはBC18世紀末のヒクソス時代初期、などを説く。妥当性や真偽は素人にはわからないが、「歴史を解釈する場合、学者はイデオロギー上の好みから可能な限り離れようとすべきである」との意見には賛成だ。2016/10/19
Book shelf
0
長くて難解な議論であるが、端的に言えば古代ギリシアを形作ったのは定説のアーリア人(ヨーロッパ人)ではなく古代エジプト人だったという主張。古代ギリシアの著述を読むとギリシアはエジプトの影響を受けたと認識されていたが、近代になりヨーロッパ列強が台頭すると人種差別的論調から、古代ギリシアの優れた文化を作ったのはヨーロッパ人だったと主張されるようになったと著者は指摘。その証明のために膨大な証拠と他者の議論の引用を展開。興味深いテーマだがもっと簡略化できなかったのか・・・2019/10/30