感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
27
ビザンチン帝国での聖像破壊運動にシャルルマーニュが同調せず、事実上聖像を黙認したとき、隠すよりも露わにする、イメージ重視の西洋のものの見方が始まったと言えようか。13世紀に始まる聖体祭は、文字通り聖体を顕示する祭りなのだし、同じ世紀に始まる告解の制度も、心の内面を余すところなく照らし出すのを目的とする。その後の美術史における肖像画や遠近法の追求は言うまでもない。さらにいえば、現代におけるルッキズムの淵源も、ここに見出すことができるかもしれない。顕すより隠すほうを選ぶ東方教会やイスラムの伝統との違いが際立つ2023/08/01
マリモ
13
んー…ちょっと微妙。思っていたのと違った。中世のことを色々語ってくれるのかと思いきや、著者が何故中世に興味を持ったかを語る本だった。そこが微妙だった。2020/10/20
左手爆弾
5
「暗黒の中世」と「理想化された中世」、筆者はこのどちらのイメージをも遠ざける。アナール学派的な伝統に沿いながら、法や大規模な経済制度に回収しえない人びとの心性(マンタリテ)を追うことで中世を明らかにしていく。中世はなるほどひとつの全体性をもった文明ではある。しかし、それは多様であって、ペトラルカやブルクハルトが古典古代と近代(現代)との中間に位置づけたような仕方では不足する。ルネサンスは少なくとも、10世紀、12世紀、15-16世紀の3回あり、有名なのはこの三番目だけだ。2016/07/19
antoinette
5
今年亡くなったル=ゴフ氏……長年積読していたのをやっと読了。インタビュー形式なので、思ったより一般向けでちょっと物足りない印象でした。ただル=ゴフのほかの著作や他の歴史学者の仕事、また社会学や宗教学など幅広くふれられていて、ガイドとしては良質かも(ただし網羅的ではない)。とりあえず「聖王ルイ」への興味が著しく増大した。……ところで、日本の高校世界史レベルの(旧い)「常識」と異なる言説が散見されるのは、格別驚くことでもないと思いますよ(笑)。むしろ高校のころこういう本を読んでいたかったなあ。2014/05/07
hajimemasite
3
個人的には、阿部謹也とジャック・ル・ゴフは中世史入門に最適な歴史家二人だと思っている。こちらはそのル・ゴフが中世について総括的に述べたもの、と思いきや、タイトルほど総括しているわけではなく、あくまでもいくつかの中世に関するお話がひとつの本に纏められているもの。面白いが、タイトルの話を想像すると面食らう。あくまでも、ジャック・ル・ゴフ好きのための本な感じ。もし中世とは何か知りたいのであれば、同著者の『中世西欧文明 』をおすすめする。2014/10/28