焼かれた魚―The Grilled Fish

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  • サイズ B5判/ページ数 43p/高さ 27cm
  • 商品コード 9784894190429
  • NDC分類 K913
  • Cコード C8793

内容説明

白い皿の上にのった焼かれた秋刀魚は、たまらなく海が恋しくなりました。「あぁ、海が恋しい。僕は海に帰りたい」焼かれた一匹の秋刀魚がテーブルの上の皿から海へ帰るまでの物語。英訳併記。

著者等紹介

小熊秀雄[オグマヒデオ]
1901年、北海道は小樽に生まれる。三歳のときに母親が死亡。姉が養女に出される。十五歳で高等小学校二年を卒業してからは、ほぼ独立した生活を送り、「養鶏場番人、炭焼手伝、鰊漁場労働、農夫、昆布採集、伐木人夫、製紙工場職工」などさまざまな職につきながら、短歌を作る。1922年、「旭川新聞」社会部の記者となり、やがて文芸欄を担当。詩、童話、短編小説も書き始める。展覧会にダダイズムの絵を出品し、その会場でのちの妻・つね子と出会う。1925年に結婚、三年後には上京して、旺盛な文筆活動を開始する。厳しい言論弾圧の中で、風刺詩というジャンルを切り開き、長編叙事詩の傑作も生み出す。社会の軍事化にひるむことなく、鋭いユーモアと豊かな感受性をもって抵抗し続けた。1935年『小熊秀雄詩集』と『飛ぶ橇』を刊行。「旭太郎」というペンネームで、SFマンガの先駆けとなる『火星探検』の台本を書き上げる

ビナード,アーサー[ビナード,アーサー][Binard,Arthur]
1967年、米国ミシガン州に生まれる。1990年、コルゲート大学英米文学部を卒業。卒論の際、日本語に出会い、魅惑されて来日。日本語での詩作、翻訳を始める。2001年、詩集『釣り上げては』(思潮社)で中原中也賞を受賞。2005年、『日本語ぽこりぽこり』(小学館)で講談社エッセイ賞を受賞

市川曜子[イチカワヨウコ]
1959年、東京に生まれる。1984年、東京造形大学美術学科(絵画専修)を卒業。油彩のほか、和紙や木の板による作品を発表し、多くの個展を開く(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

やすらぎ🍀

172
凄い話を読んでしまった。小熊秀雄さんは何を我々に伝えたかったのだろう。焼かれた魚が食卓から消える理由の一つはこれだったのか。この世界には自分に見返りのないことを引き受ける者はいないのだろうか。骨になるまでしゃぶり尽くして、もう少し、あと少しで海に戻れるというのに繰り返し捨て去られて、利己だけを追い求める。微かな救いだけは残されている物語ではあるが。絶望の淵を彷徨い、望みが強くなればなるほど、叶えられたその後は感情が途切れてしまい、ただ海に流されていってしまうのだろう。白い皿の上に残されたものはなにもない。2023/08/20

マリリン

45
小熊秀雄の詩に触れたのは初。魚の生涯が小熊の無言の訴えのように思えた。海に帰りたい...深く哀しく静かな願い。抗えない自然の摂理が何とも残酷に思えた時間。生を紡ぐために捧げられた浸食された肉体。小熊の世界がこんなにも静かで深いとは。刻まれる時の中で佇む魂は深い海の底で静かに眠り続けるのだろうか。アーサービナード氏が訳した英文も書かれていて、そちらにも触れてみたくなる。 2023/09/03

寛生

39
【図書館】漁師に海で捕らえられて秋刀魚が都会の魚屋でうられて、やがて家庭の食卓に焼き魚としてあがるが、どうしても親兄弟のいる海にかえりたいという思いから、その家の猫から、溝鼠、野良犬、烏、ありまで、そのすべての〈他者〉に懇願するために、自分の身を捧げながらも、やっと海に帰り着く。海にやっと辿りついた時には、骨だけ。それは、裏切りに裏切りを重ねられ、自らの身を食べられ、やがてじぶんの里にかえりたかったという秋刀魚の話。〈他者〉は自分の美味しい物だけを食べて逃げる。それは小熊自身の抵抗の物語だったのだろう。2014/09/08

毒兎真暗ミサ【副長】

28
作者、小熊氏の半生と重ねたストーリー。「海に帰りたい」そんな焼かれた魚の願望は想像もしない結末へ。確かにそこは海だけど。確かに間違ってはいないけど。白いお皿に焼かれた魚。あなたと魚はちがうけど。命を貰うというありがたさが、心に沁みる一皿だった。2023/09/09

mntmt

24
骨になっても故郷を想う、魂の静かな願い。銅版画も味わい深いです。2018/02/08

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