内容説明
宿命のライバルであり、宗教でもあった阿部薫の死、その不在による絶望ゆえに輝きを増した傑作映画エッセイ集。初の単行本化。
目次
いづみの映画私史(小学校時代、本は読まずせっせと映画館に通った;「痴人の愛」というタイトルに悩んだのは、十歳のときだった;女優で“いなかっぽい”というのは大変なことだ;あらかじめうしなわれた「青春」のすがた ほか)
いづみの映画エッセイ(コカ・コーラUSA;犯罪者的想像力の男;斎藤耕一における男と女;自らの中で完結する行為 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yurari
2
数年前、なぜか父から手渡された本。父が娘に渡す本ではないと思うけど、と複雑な心境で受け取ったことを思い出す。鈴木いづみの事も、伝説のサックスプレーヤーだったという阿部薫の事も知らなかったが、それでも面白く読めた。いや、だからこそ面白かったのかも。鈴木いづみの略歴を見て、市役所に勤務していたのを知り驚いた。振れ幅がすごい。 いづみと友人たちとの会話が面白い。特に、ブスの話からカップラーメンについての考察、自分の文学的?な悩みを賞賛するところがすごく好き。2016/10/03
りさこ
2
鈴木いづみはどうにも現実感のない人で、彼女の作品を読みながらもこの人は本当にこの世に存在していたのかと思うことが多かった。しかし本書には今も現役で活躍する芸能人についての言及が多く、彼女が同じ時代を生きていたことを思わせる。なんか不思議。そして何よりも、阿部薫との生活と彼の死についての記述が凄まじかった。2012/04/14
鏡子
2
「恋は性欲の固定化でしかない」 「死が残酷なのは、息をして冗談をいい、性交していた人間が、あるときからまったくの物質と化してしまうからだ」 「情熱は不安によってあおり立てられるが、おだやかな日常に呑み尽くされる」 「感受性の鈍い男はまったく堪えられない」ある観念の理由、ある事象に対する感情の派生する根っこを掘り下げて、 普通の人は言葉にできないであろう感覚を、言葉にしてしまう、すごみ。 2012/02/16
toron*
1
鈴木いづみの映画に関するエッセイ集。鈴木いづみはSF小説も書いていたけど、正直けっこう敬遠してて…でも『2001年宇宙の旅』がすごく好きだったみたいで、『渚にて』みたいなSFを書きたいともここで云っていて、ちょっとSF小説の方も読んでみたくなった。文章は相変わらず軽くて読みやすいのに、この人いつしんでも不思議じゃないって雰囲気が漂っている。阿部薫を自分の宗教だと云っていた文章が何処にあるのか探していたので、このエッセイに収録されていて良かった。 2018/04/07
marinefrancaise
0
また読み直してみたいな。