内容説明
10光年のはるか彼方から鈴木いづみが還ってきた。静謐な絶望のうちに激しく愛を求める魂を描いた自伝的長編小説。衝撃の自殺から10年、希望を抜き去り、あっというまに絶望までも明るく抜き去った、’70年代最速のサイケデリック・ヴィーナス、鈴木いづみが還ってきた。ニセモノを見極め、かつ楽しむことができた醒めた目は、とれかかったつけまつげの奥で何を見つめていたのか。’70年代から現代を照射する、いづみファン待望の著作集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜長月🌙
62
70年代、メディアの注目を集めた女優兼作家の鈴木いづみさんの自伝的小説です。モラルではなく感性で生きた。その感性がほとばしる作品です。鎮痛剤や精神病薬のオーバードーズでラリるのも飽きた。それくらいなら道端で男を拾ってやる方が快感がある。親友の彼氏を共有するのも楽しい。二股、不倫、上等。愛もなく結婚してみれば超束縛に暴力。足の小指を切り取られます。そして自殺。タイムマシンがあったなら幸せな頃に戻りたい。そんな時があったのなら。2021/02/07
凛
14
衝撃を受けた。普通の人ならばオブラートに包んで控えめに差し出す感覚を買いたての包丁みたくスパァッと容易く心の底まで切り込みねじ込んでくる。前半は付箋張り出したら切りがないほどキレッキレ。文が平易なだけにインパクトが大きい。凄い吸引力。名前は知ってたけどこんな文を書く人だったとは。これはコレクション全部集めるコースですね。ヘルタースケルターを思い出した。2013/07/30
ふじ
6
文章自体は渇いていて平易なのに、ひりひりした焦燥感を感じる。感覚的な思考のひとつひとつが、心の深いところに刺さってくる。2014/09/18
Automne
4
60年代カルチャーと括らなくても良い。むしろ令和のいま出版されても遜色ないくらいの虚無感の強さと諦観、擦れて擦れて擦れ切った絶望に満ちた闇の深い眼。彼女の身に近い言葉はひりひりと沁みる。現代で認知度が低いのが驚くくらいに素晴らしい文学。鈴木いづみに比べたらよしもとばななも川上未映子もまだまだ幼い少女だなあと思う。このひりひりさ、切羽詰まった感じ、女性的感性と男性的論理もどちらもわかりすぎることの絶望を描いているのが深く深く共感できた。良作です🫰2023/06/09
ルミー
4
人間の「普通」がわからなくて自分なりに悪戦苦闘した結果、アクセル全開でブレーキも全開の状態を「普通」だということに納得してその通りに生きてしまった人の話、だと思う。あとは頭が良すぎて全てを一目で見て了解、納得してしまうために諦めにつながるか。だから戸川純の言う通り理由付けの論理が欠落していつも答えしか書いてない。光の描写が上手い。2016/06/18