出版社内容情報
ある日、犬は、野の道を疾走する車の窓から投げすてられる。にわか野良になった犬のその日の長いさすらいをたどって描く。目を吸いよせて離さない50を超える犬の姿態と表情はすぐれたデッサンにより酷いばかりの迫真である。あるいはひとりに秘めておきたい絵と思い、誰かに見せずにはいられなくなる作品でもある。
内容説明
絵本の原点 感動の一冊
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
277
ある一日、ある犬。ラフなデッサンだけで、犬の孤独感や喪失感が伝わってくる、スゴい絵本。文章や言葉はない。でも、余白や空白に、動き、感情、音を読み取ることができます。みやび珈琲伊丹本店の本棚にて。ある店、ある本として。2022/11/06
やすらぎ🍀
259
🌠ある日、野の道を疾走する一台の車の窓から棄てられた犬。突然野良となってしまった犬にどうしろというのでしょう。…さすらい歩くものの、突然の孤独、徐々に感じる棄てられた現実に戸惑うしかありません。衝撃の内容を綴る絵本ですが、現実に起こりうる残酷な真実でもあります。慰めや恨みでは支えきれない出来事に、空にむかって吠えるしかない犬。やがて、ひとりぼっちの少年と出会い、こころに灯りがともり救われます。虐待から生き物の命を守らなければいけません。振り返るアンジュール…本当にごめんね。そんな悪い人だけじゃないから。2021/02/28
zero1
227
悲しさ全開!人間は実に身勝手で、残酷なことがこの世には多くある。それをシンプルなデッサン、しかも言葉無しで表現した異色の絵本。犬だから無理な擬人法を用いるのは不自然か。逆に言葉や説明が無いことで表現力は向上。色が無いのに私には鮮やかな色が見えた。孤独は人間だけではない。犬や猫も孤独。そして捨てられる彼らに罪はない。これから読む方は最初のページで何が起きたか、しっかりと見てほしい。そうすれば作品世界に深く浸れる。読む価値のある一冊。作者と題名については後述。複数の読者が題名を犬の名前だと解釈しており驚き。2021/02/11
Willie the Wildcat
212
鉛筆のデッサンが印象的、かつ哀愁を感じる。愛するものに捨てられても信じ続ける。何かを求めて彷徨う。そして新たな出会い。良かったなぁ、と思うと同時に、出会った少年の表情が少し悲しそうなのが気になる・・・。少年も少なからず同様の境遇なのかもしれない。「人のエゴ」と共に「信じることの大切さ」を説いているのかな・・・。平原を彷徨う小さな犬の後姿が頭に残りますね。2012/05/13
kanegon69@凍結中
197
な、、な、、なんじゃこりゃぁーーー!!こんな絵本見たことない!えええええええっ!なんなのこの絵本、、凄い!鉛筆でものすごくシンプル(というかミニマム)に描かれた犬の物語。言葉は一切なく淡々と捨てられた犬の一日を描いている。目を惹きつけてやまない犬の表情、犬の心の叫び、犬の動き、周りの情景、本当に線が少ししか書いていないのに、圧倒的な想像での情報量が押し寄せる!短編の白黒無声映画を観たような感触。一つ一つのデッサンがものすごく力を持っている。まったくもっての初体験の世界でした。心を鷲掴みされてしまいました!2019/12/12