内容説明
ラテンアメリカ文学の名を世界に轟かせたアルゼンチンの高名な詩人=小説家が、幻想的なまでの博識とユーモアにみちた静溢さのうちに、半世紀にわたって追及し続けてきた言語、書物、時間、そして不死性の問題へと肉迫する最晩年の連続構演。
目次
書物
不死性
エマヌエル・スウェデンボルグ
探偵小説
時間
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
傘緑
23
「人間が至福感を得る可能性…書物もまたそのひとつ」「新聞は忘れられるために読まれ…軽薄なものである…書物は記憶されるために読まれる…」 何と!ナントの難破船(ハドック船長LOVE)!久しく積読になっていた本、そんなことってアラル海! ナイスな御仁の「簡にして要を得る」つぶやきがなければ顧みもしなかっただろうと思う。この失態を今朝は過去の自分に悪くあたってしまったわけです、それこそ「…バーロ―岬」「過去は現在の糧だ!」などと罵倒して、結果(過去の自分との)食中毒と(ボルヘスの)消化不良による自己嫌悪に沈没中2016/10/16
ぞしま
19
講演集。接しやすい。『伝奇集』にしても『砂の本』にしても、自分が決して届くことはない到達点より吐かれた言葉が形成する深淵/幽遠な世界を覗き見、つながり(勘違いかもしれない)を見出し、悦に浸っていたような気がする。けど、本作でのボルヘスはタイトル通り喋っている。喋っている、のだけど、まなざしはすさまじく深く根ざされており(当然)単なる口語に堕しない。これは明晰さと神妙さが入り混じった語法/話法とでも言えば良いだろうか?本作を読み終え、ビクビクせずにもっと素直にボルヘスを読もうと思えた。2017/02/22
tonpie
16
80歳近い盲目のボルヘスが、アルゼンチンのベルグラーノ大学で行った講演録。別の本で読んだ「私は非常に退屈な人間です」というボルヘスの自己紹介がとても好きだ。この退屈な老人が視覚を失い日々何を思っているか傾聴し、静かな感動に包まれた。 【書物】「わたしは今でも盲目でないふりをして本を買い込み、家中を本で埋め尽くしている。人間が至福感を得る可能性はいろいろあるだろうが、書物もまたそのひとつであると信じている」「一国を代表する作家を選ぶ場合、どの国も奇妙なことに、自国の典型的な人物を選び出さないようである。↓ 2020/10/04
...
4
ボルヘスの講演は読んでいて、晴れ渡る青空を見上げながら、美味しい空気を吸っている気分になった。もし、自分がボルヘスだったら、ボスへスの書いた小説や詩を、曇りもなく、楽しむことができるのだろうか。ボルヘスの口から出てくる言葉は心に向こうからやってくる。物語ではこちらが歩み寄ってもつかみどころがないのに。2017/02/02
梨
4
「探偵小説」の章が一番楽しめた。「楽しいものだけを読むこと、書物とは楽しみをもたらすものでなければならない」「文学上のジャンルというのはおそらくテキストそのものよりも、テキストの読まれ方いかんにかかっているのではないだろうか」。この二つの文章だけでも収穫と思いたい。また、「不死性」の章で述べられていることは、文学作品や物語になぜ感動するのかという疑問への答えに(自分の中では)なった。『砂の本』は読書体験そのものの比喩だったのかもしれない。2010/08/22