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内容説明
カリブ海域にフランス大革命の理想を広めるべくハバナを訪れたビクトル・ユーグ。彼につき従うキューバ青年エステバンと美しいソフィア。キューバを含むカリブ全域からフランス、スペインにまたがる世界を舞台に、3人の波瀾にみちた運命を語りつつ、《革命》への限りない情熱と深い幻滅を描ききった、現代ラテンアメリカを代表する作家の待望久しい大長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
rinakko
5
“フランス革命の歴史から無視されてきた”という、歴史的人物ビクトル・ユーグ。パン屋の息子から商人となった彼は、革命の熱狂の中へと身を投じた。そして、カリブ海域に大革命の理想を広めるべく、ロベスピエールからの指令を受ける…。(しかし、啓蒙だか何だか、押し付けられる方は堪ったものじゃあない) 革命はいずれ頓挫を来す。高邁な思想は悉く潰え、一度解放された現地の黒人奴隷たちは、再び足枷を嵌められただけ。自身を取り巻く欺瞞に飽き飽きしたエステバンが、信じられるものを一つ残らず失っていく過程には胸が痛んだ。2013/04/05
てれまこし
4
フランス革命というのはヨーロッパの近代革命だというのはウソとは言えんがかなり怪しい。その影響は大西洋を越えてカリブ地域から中南米にまで達し、時には本家本元を凌駕した。フリーメイソンが勃興する商人階級や船乗りたちを通じて、すでにグローバルなネットワークをつくり上げているのには驚かされる。ラテンアメリカ文学というのも、どうやらこの環大西洋文化の産物である。カリブとマジック・リアリズムなんてものも結びつかずに困っていたんだが、これだけ雑多な人びとが往来すれば、そりゃホラ話も含めてそういう咄文化ができあがるわな。2018/06/14
千一万華鏡
1
革命によって煽られ、革命によって流され、革命によって傷つき、革命によって歴史の闇に飲まれいく。光の世紀の後に訪れた混沌とした時代に胸が締め付けられる思いでした。 「政権を平和裏に後退させる可能性のない革命はどんな革命も自らを滅ぼす革命である。それは一つのまやかしである。」 読後にはパスの言葉が蘇りました。2019/04/28